屋根のない檻
髪を編む手つきも覚えず住んだ家あの月の出も消えたここから
冷たいと思った髪の手触りが夢に落ち着く花は萎れた
崩れ出す星の残った空の風ちぎる光線屋根のない檻
踏む道の熱に弾んだ空気からつくる血の音空を染め出す
すくう風まつ窓の下爪を出し立ちつくすとき春は終わった
噛みちぎる空のゆがんだ音のもとしびれた腕につたう温さを
押してみる変わる色彩つつむ水かよわぬ心あたたかい朝
靴跡の残る床さえいじらしく湿気の混じるゆらぎ出す日々
ちぎりとる月を磨いた枝枝のささえる雲のはらむ光を
なめらかな冷たさ指につかませてこわれる花の放つ音階