空をくぐる             
浮き上がる葉裏の色に足をのせ飛びこむ空をさしだす匂い

流す水突き刺す熱い刃のない手 においを閉じる服につめこむ

崩れた手動かし握るなめらかな光りの石にかかれた名前

花になる空には遠い道があるうずめた音を掘りだし歩く

推すドアのはらう光がこじ開けた萎えた花びら肩にまとって

のばす脚 蹴った空気のゆり起こす服がまもったうす色の影

とぶ光追う手のさきのささくれた冷たさ今日も葉裏でぬぐう

花をただゆする湿気に腕をのせ見上げたかげり窓に飛び寄る

爪を塗る春の部屋へとかげる月 花には今日もたくらみがある

手触りのよみがえる風のび上がりつかめたはずの雲をくぐって

ふれる熱抱えてわたる梢から降る影をよけ匂う記憶を

嗅ぎなれた部屋へ戻ろう月ふたつしゃぶって走る桜葉の下

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