空に降る雨          
月にのる滴 手をよせなで上げた雨の染み込む服の大きさ

空を消す花に手を挙げ別れた日 光は止まない服を替えても

指先にのこる傷んだ夜の跡空を目指す花びらが行く

痛みもなく夜にも歌う枝のむれ月の味わい葉先をうるおす

朝開く硬い光の柵による花をなじった風に巻かれる

指にある色 雲に寄せすべらせた電池の切れた並木の終わり

杭を打つ響きの形口寄せる魚のうねりに濁った夜空

髪に乗る重さ薄青冷たさの月の破片に春は閉じる

金の葉のはりつく光にしのびよるひび割れた声祈りを巡らす

齧りとる花々手をあて星を追う石を貫く春の衰え

のびる花見やり飛ぶ空人影の重なり合った雲の行き先

このときに打ちこむ夢のつくる森 窓越しに見る空に沸き立つ

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