十三回の音               
片耳をおおう冷たさ十三の冬にこぼした声につながる

引き攣れる体を押さえ足した石 生まれた場所をどうに問おうか

十三の切れた指先夢を摘む どの火にくべて色を見ようか

曳く風のまだない花をかき分けて空にたされた傷あとを見る

ドアの開く音を聞く道冬はまだ十三枚の窓の向こうに

夜に閉じる花の匂いを思い出す曳かれた指にたした色振る

月を掘る日を取り決めた十三の頃に泳いだ空の温度

汲む陽射し味を確かめ花に足す雲の蔓にもひかれて歩く

葉を裂いて道のりに足す引きかけた陽の残す音に倒れた木陰で

風を越す十三の夜 枯草の重なる影にいらだっていた

足した時のひきずる春を手に受けて毛先をあげる獣を赦す

空の溜まる庭にならんだ十三の柱にそっと素足を載せる

水をたすコップにひれをふり上げる人魚の髪を引き抜いてみる

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