風をはがす            
枝葉から切られた月の落ちてくる道にあふれる雨に駆け寄る

雲にさわる音のする午後 夕立の消えた階段上り詰める駅

掘り返す根にのる星に手を伸ばす重い光は腕に集まる

積み上げる夕日の影から吹き荒れる花びら傷ののこる爪先

木の陰の花群雲を梳き上げる萎れる色の指で折り取る

刈り跡の色曇り空 手をかざし触れるざわつく血のにじむ背で

くらい壁吹き通る風 爪を出し剥がすこの世の果てがないかと

開く戸を打ち返す空 目をほそめ見下ろす音の瞬きを踏む

土にのりのびる身体に刺す雨をたどった足にしみるにおいを

この夜を吹き上げる壁 影を取りざわめく枝を絞め殺していく

おさえ込む空 夜に逃げ風をもつ線路に滴る止めようもなく

空につづく廊下に残る日の色を数えてわたる足音の冬

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