そんなに偉くはないと思うよ

我が家のモルモットは、みな女の子である。
繁殖してしまう動物は最初に手に入れた個体の性別が、結局引き継がれることになってしまう。
まあ、死んでから次に移ればいいのだが、どうも一匹だけでは寂しいよねとか、根拠のな言い分を
当のモルモットを無視して通し、多頭飼いに走りがちな為である。
今現在、我が家のモルモットは一匹だけだが、それ以前は常に、二匹、三匹とまとめてケージに押し込めていた。
このやり方は、ハムスターなどと違い、飼育上あまり問題はないはずなのだが、まあ、個体差がありますので、
やめときゃよかったのよねえと反省してます。今となっては。遅いんですけど。

モルモットを飼育している人間は、かなりな動物好きである可能性が高いと、密かに思っています。
某有名ペット雑誌のモルモットコーナーを他の動物たち(フェレット、ハムスター、ウサギ、インコ、チンチラ等)
と比較して得た感触ですが。
こう、地味というか地道というか、うちの子自慢も控えめで、めろめろも、極端な面白がりというか馬鹿自慢もせず、
淡々と日常を観察しているような投稿が多い。
日本では、コンテストなんてものもないので、日常のお手入れなんて記事も、どう病気を防ぐかとか
安全な爪きりの方法だとかがメイン。
毛の長い品種を飼っている読者の投稿に、衛生面を考えて、目の上とお尻回りの毛は短く切っているなんてのもあって、
それがいいよねというのりでコメントが付いていたり。
それ、長毛飼っている意味があるんかいっていうつっこみはないのでした。
うちでも、初めて飼ったモルモットが半端な長毛で、同じようなことをしていたのですが。
ブラッシングもあくまで動物と人間の健康のため。
お子さんに飼わせるなら、じつはハムスターよりお薦め。
アレルギーもずっとすくないんですよ。
身体がそれなりにでかいから、脱走してもすぐ見つかるし、踏みつける事故も起こり辛いし。
噛み付きもまずしない。穏やかで、よく懐きます。

言ってて虚しくなってくる。
うちのお嬢ちゃん方は全然違います。油断すると噛みつかれます。油断しなくても蹴りを入れられます。
人を見ると睨みつけます。非常に不愉快そうに。そして、小屋に逃げ込みます。
撫でてやると思いっきり嫌がって怒ります。
身をよじって指から逃げる姿は、もう、何考えてんのよーという声が聞こえてくるようです。
私は満員電車でたまたま女子高生の隣に立つ羽目になったオヤジのように毎日扱われています。

一番初めに飼った二匹のモルモットは、違ったんですよ。
シンリンとカーリンという非常に美しい名前を付けてみたのですが。
シンリンは前髪とお尻の毛が長い、白地の多い三毛猫のような毛色をした、
でもちょっと容姿がアレよねな、性格のいいこでした。
人懐こくて、私が帰宅するとぷいぷいーと鳴いては、えさをねだってくれました。
鼻面を撫でると気持ちよさそうに首を伸ばしてうっとりしてましたし。
ああ、モルモットっていいよなあと、しみじみと幸せでしたよ。
カーリンのほうは、すごい美人さんで、
毛色はつやつやの黒にところどころ茶が混じるという、あんたやりすぎな外見をしていました。
もっともペットショップにいた子供の頃は、その毛色のせいでなんかパッとせず、
いや、私はもう美しいお顔に一目ぼれだったんですが、買う時には店員さんに何度も「そこの黒いのが欲しいんです」
と説明する羽目に。
店員さんの頭には、わざわざカーリンを選ぶ人間がいるという事態がかけらも入ってなかったようです。
あんなにきれいな子なのに。半端な尻毛がよくなかったのだろうか。

その二匹に非常に満足していた私は、よせばいいのにもう一匹増やそうとペットショップ通いを始めてしまいました。
そして、出会ったのがぷいち。
漢字で書くと佩慈という美しい字面と、広東語の読みのギャップが気に入って名付けたのですが。
こいつが間違いだった。いや名前がではなく、性格が。
美人でしたよ、だしかに。
カーリンよりも美人だと人には言われました(私はそうかあと思ってましたが)。
で、こいつの性格を一言で現すと、根拠なく気位が高い。これにつきます。
だいたいモルモットの気位が高くて、どうだっていうのでしょうか。
やたらと、えらそうなモルモット。
こいつは私が頭を撫でてやっても気持ちよさそうになどしません。
露骨に迷惑そうというか、屈辱にもえる目でぎろりと睨みつけてきます。
えさをやってもまずいわ、私を馬鹿にしているのっという声が確かに聞こえる。
シンリンのことはやかましいおばさんと露骨に軽蔑の眼差しで睨むし。
ちょっと物音に驚いたりするとすぐシンリンの陰に駆け寄りやがるくせに。
それはすぐ、なかったことになってしまう。
シンリンが不慮の突然死をとげたときも、巣箱の入り口を塞ぐように倒れたシンリンの硬直した死体に、
ただただ迷惑そうな顔をしていただけでした。
いまでもあの、不愉快そうなぷいちの顔はありありと思い出せます。
もしや、おまえのせいなのか、シンリンの死は、と、そのたびに思うのでありました。

で、この気位の高いお嬢さんとの生活はあんまり楽しいものではなく、
うーん、他のもうちょっと可愛げのある子も飼おう、と決心するのにいくらもかからなかったわけです。
で、大量にモルモットの子供が近所のペットショップに入荷した際、散々迷って買ってきたのが、
今飼っているうねちゃんなのでした。
恩恵とかいてうんへ、ではなく、うねと読む。韓国語よみですな。

私はどうも、モルモットを見る目がないようでした。
ぷいちは根拠なく気位が高いだけですが、うねはただただ生意気なんすよ。
この気位が高いと生意気の間には、確かに格の違いというか、品性の差というか、あります。わかります。
日々接していると。
うねはもう、あたるを幸いムカつきます。どんな状況も、ムカつくで表してます。全身で。
こいつは抱き上げるのには慣れさせようと、買ってきて半月くらいは日々二十分ほど膝に乗せて身体を撫でてやったのですが、
いやあ、懐かなかったですねえ。
無理に懐かせる必要はないだろう、と皆さん思われましょうが、人の手に慣れていないと、
いざ病気や怪我などで獣医さんにかかるときに、ちょっと困った事態になるんですよ。
懐かないまでも、慣れていないと診察もできないのです。
体が小さいので、麻酔するわけにもいかないし。
いや、いっそのことキュッと締めてやろうかと思わないでもないのですが。そうなったら。

ところがこの、こぎゃる(死語)うねちゃんが意外な人生の罠にはまってしまったのです。
それはまた、次回に。

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