■2001年1月1日〜6月30日
□6月30日(土)
●森博嗣『スカイ・クロラ』★★★
ノンシリーズの長編小説。今作はミステリではない。あえてジャンルでくくればSFに分類されるんでしょうか。戦闘会社で仕事として戦争をしている飛行機乗りの物語。
青臭くて感傷的な語り手(主人公)の一人称による小説で、これはもう、単純に好き嫌いで評価されるべき作品でしょう。私は好きです。以上。
□6月25日(月)
●上遠野浩平『紫骸城事件』★★★
仮面の戦地調停士EDシリーズ(といっていいのだろうか?)の第2作。いわゆる剣と魔法のファンタジー世界を舞台にしながら、本格ミステリとしてのツボはきちんと押さえてある(西澤保彦のSF系ミステリのように、作品世界におけるルールがきちんと手がかりとして明示されているという意味で)。
が、今回は真相をあかされても、それまで見せられていた事件と結びつけるために数段階の「解釈」を必要とするあたりが弱い。
それにしても、金子一馬のイラストは好き放題やってますね。前作の「竜」にしろ、今作の「紫骸城」にしろ、タイトルだけ見て思い浮かべていたイメージとはるかにかけ離れたイラストを描いてしまうあたり、いやはや何とも。次作の「海賊島」もどんなふうに描かれるのか楽しみやら不安やら。
□6月20日(水)
●秋月涼介『月長石の魔犬』★★(2001/10/21修正。以前は★★★)
冒頭を読んだ印象では、お、結構期待できるかも、と思ったのだが、残念ながら期待はずれ。同じ場面を3人の視点から描写するのには何か深い意味があるんでしょうか?
ミスディレクションがミスディレクションとして機能していないとか、もはや手垢にまみれた死体装飾の理由とか、物語の表層が扇情的なわりに読んでいて驚きがまったくないのがミステリとしては致命的。ちなみにこちらでは罵倒されてますね。
で、なぜ★★★なのかというと、とりあえず次作も買ってみようかという気にはなったからです。ミステリの文法をきちんとおさえたら化けそうな予感もあるし。
□6月17日(日)
以下、最近読んだ本の感想。ちなみに、『鳥類学者のファンタジア』は途中で挫折。
●津原泰水『ペニス』★★★★
『ペニス』のネタばれがあります。
私はこの作家の何よりも文体に惚れていて、「メフィスト」を毎号買っていないがら掲載されている小説を読むことは竹本健治の『ウロボロスの基礎論』以来、絶えてなかったのだが『ハウンド』だけは例外で、しかし、ご存じの通り『ハウンド』は2回掲載されただけで連載は途絶え未だ書籍としても刊行されず、もちろん『蘆屋家の崩壊』も読みはしたものの、元来、私自身がよい短編小説の読み手としての資質を欠いているのでいささかもの足りず、まあ、そんな感じで待望の第2長編が刊行されたというだけで思わずガッツポーズをとってしまうほどなのだが、購入して冒頭の数ページを読みうっとりしながらもしばらく放置してしまったのは我ながらどうしたことだろうか。
さて、語り手の果てしない自己愛と自己陶酔の根本をなしているのは自分が性的不能者であるという一点である。彼はその一点により特権的な存在としての自己を確立している。ペニスを自己の中心に据えながら、しかし、彼自身はペニスに対する自己の精神の優位を信じて疑っていない。
物語の結末において、彼は自己の精神が他の性的不能者ではない男どもと何ら変わらないペニスの付属物でしかなかったことを告げられる。彼は特権的な自己を失い、同時に初めてペニスから自由になる……という読み方は、あまりに図式的ですかね。
●松浦寿輝『巴』★★★
『巴』のほか、ジョン・ファウルズ『魔術師』のネタばれがあります。
ここにも書いたとおり、私が偏愛するジョン・ファウルズの『魔術誌』をそもそも読むきっかけとなったのは松浦寿輝のエッセイで、「形而上学的推理小説」というこの作品の帯に付された惹句を見た時にまず頭に浮かんだのがその『魔術師』だったのだが、その予感はあながち的はずれではなかった。謎の老人を中心とした目的不明のたくらみに主人公が巻き込まれていくという物語の構造はあからさまに同じだし、他にも『魔術師』を意識していると思われる部分が散見する。
しかし、『魔術師』ではそのたくらみの底のなさで現実との境界線が否応なく崩壊してしまうのに対し、この作品では意外にあっさりと底が割れてしまう。少女は別段、仮面の下に別の仮面を隠しもってはいないし、主人公のかつての女が黒幕の老人とつながっていることもあっけなくあかされてしまう。新たに導入された要素しては、第三勢力による事態への介入で、これはタイトルである『巴』という言葉に象徴されるように「3」という数字がこの作品の重要のモチーフである以上、まあ、当然のことだといえるだろう。
で、これは私の読者としての資質の問題に帰すのかもしれないが、私はそういった隠喩に何ら価値を見いだせないので、結末に至っても正直なところ「だから何なんだ!」という気持ちが拭えなかった。例えば物語のギミックとして、「呪術」なり「陰陽道」といったハッタリ(適当に思いついた例をあげたので、深い意味はない)を用意して物語世界における「現実」を揺るがして見せるといったサービスもなく、ただ、老人の「妄想」とそれに感化された主人公の「幻想」だけで世界に亀裂を入れようというには──直前に読んでいたのが津原泰水の『ペニス』だという理由がもっとも大きいのだが──文章がまったく物足りない。
しかし、それでも★★★をつけたのは、そうでない部分、例えば、病院からの脱走やボートでの追跡、あるいは格闘のシーンなどが思いのほか楽しめたからで、『花腐し』を読んだ時にも思ったんだけど、一度、もっと通俗に徹した小説を書いてみてもいいんじゃないでしょうか。
□4月23日(月)
奥泉光『鳥類学者のファンタジア』を読み始める。
文中に(♪)って……清涼院流水じゃないんだからやめなさいって。
以下、3月17日以降に読んだ本の感想。『模倣犯』と『片想い』はとりあえず評価のみ。
●恩田陸『ライオンハート』★★★
「天球のハーモニー」がなければ★4つ。ベタな物語を臆面もなく語るその心意気やよし(褒めてます)。
●恩田陸『MAZE』★★★
ここにきて文章の薄さがストーリーの足を引っ張っている感じ。いや、おもしろいんだけど。
●宮部みゆき『模倣犯』★★★★
●古処誠二『未完成』★★★
文章は軽くていいんだけど、もうちょっと饒舌でもいいんじゃないかなぁ。惜しい。
●東野圭吾『片想い』★★★(2001/10/21修正。以前は★★★★)
●小野不由美『黄昏の岸 暁の天』★★★
シリーズものなんで、単体での評価はしづらい。とはいえ、今までには作品単体でも充分おもしろいものもあるわけで、そういう意味ではものたりない。
2ちゃんねる「新・mac板」のロゴがリニューアル。私もこれに投票しました。笑える。
□4月16日(月)
昨晩、『PHANTASY STAR ONLINE』でレベル100(HUmar)のキャラクターがロスト食らって、すっかりやる気をなくしてます。ああ、ツインブランド……。そろそろ潮時ということかな。セカンド(FOnewm)もレベル40の壁をなかなか超えられず。サード(RAcaseal)にいたっては未だ1桁。『Ver.2』が出れば少しはやる気になるのだろうか。
土曜日に新宿で流体軸受けのハードディスクを購入してきて、iMacの内蔵ハードディスクを換装。ついでにFirewire接続のケースも買ってきたので、余ったのは外付けとして使うことに。つーか、いま、内蔵・外付けハードディスクの総容量が95GBもあるんですが、いったいどうするつもりなんだ>俺。
現在、東野圭吾『片想い』を読書中。
□3月18日(日)
遅ればせながら、SEGA(smilebit)『デ・ラ・ジェット・セット・ラジオ』を入手。これは、昨年発売された『ジェット・セット・ラジオ』の海外版『JET GRIND RADIO』を国内向けにローカライズしたもの。新ステージやプレイ可能キャラクタの増加などの新要素が追加されている。久々にやったけど、やっぱりおもしろいわ、このゲーム。
恥ずかしながら、シブヤチョウ駅前ステージの無限トリックの決め方がようやくわかりました。いや、たいてい警察の看板のウォールライドから次のガードレールへのジャンプでしくじってしまうので、実際には無限にはできないけどさ。
本日購入した本。皆川亮二『ARMS』16巻、富沢ひとし『ミルククローゼット』2巻、田村由美『BOX系』1・2巻、綾辻行人/原作・児嶋都/画『眼球綺譚』、舞城王太郎『煙か土か食い物』、石崎幸二『あなたがいない島』。
□3月17日(土)
相変わらず更新が滞っております。さすがに『PHANTASY STAR ONLINE』にも飽きはじめたところで、ver.2の発表。やばいです。
そんなわけで、今年に入ってからあまり本を読んでいません。以下、読了した本(ミステリ系の小説のみ)。
●殊能将之『黒い仏』★★★
事件の表層の貧相さとスケールの壮大な真相(笑)のギャップが楽しい。
●スティーヴン・キング『ザ・スタンド』(これは昨年からの続き)
上巻★★★★、下巻は★★★、全体としては★★★
予見された未来の危機を防ぐために主人公(たち)が行動するという『デッドゾーン』の拡張版ともいうべき内容(発表順から考えれば、『ザ・スタンド』を凝縮して再構築したものが『デッドゾーン』と考えるのが正しいのかもしれない)だが、肝心のメインプロットの処理がお粗末。行動の大半がほとんど現実的な結果に結びつかず、なしくずしに「解決」してしまうのは納得がいかない(マキャモンの『奴らは乾いている』を思い出したよ)。前半がおもしろいだけに、残念。
●小野不由美『黒祠の島』★★★★
物語の前半部に出てきた情報の大半が、何らかの形で結末で回収されるという、伏線好きにはたまらない1冊。
●ジム・トンプスン『内なる殺人者』★★★
新装で復刊され、未読だったので読んでみました。主人公はただの「頭の良い犯罪者」、でよかったのではないかと思う。
●都筑道夫『なめくじに聞いてみろ』★★★
さすがに古くささは否めず。対決シーンは、狙っているのかもしれないけど、あまりにも劇画的というかなんというか。
●北村薫『リセット』★★★
悪くないけど、同趣向のメロドラマとしては『ライオンハート』の方が上か?。
あまりにスローペースで買った本が消化しきれていません。
で、現在は恩田陸『ライオンハート』を読んでいます。
□2月2日(金)
すっかり更新が滞っております。スティーヴン・キング『ザ・スタンド』も未だ読了できず。今年に入ってから読んだ本はといえば、殊能将之『黒い仏』1冊のみ。ずっと『PHANTASY STAR ONLINE』をやっていました。というか、やっています。現在、レベル87。セカンドキャラもつくってしまったり。もうしばらく開店休業状態が続くかと思われます。いいのか、それで。
□1月4日(木)
ただでさえ少ない冬休みのほとんどを『PHANTASY STAR ONLINE』に捧げてしまった。
ちなみにKEIという名前のヒューマーでプレイしています。
□1月2日(火)
新宿にてラース・フォン・トリアー監督『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を観る。これはもうビョークの歌声と演技、というよりその存在がすべて、といった感じの映画。
映画そのものより、携帯電話の電源をきっておらず、あまつさえ小声ながらも電話の受け答えをしていた馬鹿の存在が印象に残っている。おまけにラストの無音のシーンで持っているビニール袋をがさがさと音を立てて帰り支度をする始末。逝ってよし。
□1月1日(月)
新年早々、オンラインで『PHANTASY STAR ONLINE』。ハードモードでの冒険中、原因不明のリセットがかかって呆然。このゲーム、レアアイテムの増殖防止のため、データのバックアップがとれない仕様になっている。そのため、ゲーム終了時に保存をしないと、アイテムやマグ(アイテムを与えることで成長する特殊防具)が初期状態にもどってしまうのだ(キャラクタのレベルはそのまま)。おまけにプレイしていたサーバを忘れてしまったため、探しまわったのだが結局ゲームに戻ることもできなかった。もうすぐラスボスというところだったので、他の方々がどうなったのか非常に気がかり。事故とはいえ、申し訳ないことをしてしまった……。
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