大韓民国ソウルとその近郊編

旅行第3日目 その1

京義線に乗ったつもりが

3日目。朝7時半という、昨日に比べるとゆっくりとした起床。
今朝は、ホテル内のレストランで朝食をとる。どういうわけか、この店に来る客はほとんどバイキングの食券を持っている。一方、私は持っていない。メニューを見ると、バイキングはすごく高かったので、ヘルシーに野菜粥定食にした。バイキングに比べれば食事にありつくのに時間がかかったが、このお粥はおいしかった。

8:25、ホテルを出発。近くの「市庁」駅から地下鉄1号線でソウル駅に向かう。

 ソウル駅
 

今日は、もう一つの北朝鮮との分断路線、京義(キョンウィ)線に乗ろうと思う。京義の「義」とは、北朝鮮の町新義州(シンウィジュ)のことである。私は今年の3月に、この京義線の平壌〜新義州間に乗車という貴重な体験をしている。(このときの体験談は「鉄道もの」「京義線(平壌〜新義州)」へ)
現在、板門店まであと約10kmという、ムンサンというところが韓国側の暫定的な終点となっている。
(注;「ムンサン」の「ムン」は「さんずいに文」という文字で、日本の標準にない文字なので、以下カタカナで表記します)



ソウル駅構内
 

おととい下見したとおり、駅2階の払戻窓口へ。京義線の切符売り場もここなのである。
何でこんなことになっているかというと、現在ソウル駅構内は、ソウル〜釜山間の新幹線工事に関連した工事の影響で、京義線の
ソウル〜新村間の定期列車をほとんど運休としている。よって、現在ソウル発の京義線方面の列車は3本(うち1本はソウル郊外線)しかない。このため、わざわざ京義線用の窓口を作るほどの需要がないのである。
で、私はその数少ない
ソウル始発の京義線列車に乗ろうとしている。



11,12番線用改札口。駅員さんがいなかった。
 

ソウル駅は、ホームごとに改札口があり、京義線の列車の出るホームへ行く改札口には駅員がいなかった。勝手に中に入る。
このホームも、普段は釜山方面からの
到着専用ホームとして使われているようである。

その12番線ホームには、ムンサン行きの5両編成のディーゼルカーが出発を待っていた。車内はすいている。



ムンサン行きの列車
ソウル駅12番線に停車中。
 

 

列車のサボ。1日2本しかない貴重な列車。
 

8:50出発。ソウル発ムンサン行きの列車は、7:50と、この8:50の1日2本しかない。
ソウル駅を出発すると、かなりゆっくりと駅構内を出て行く。この先に車両基地があるので、複線である。市街地ではあるが、起伏があってトンネルをくぐり、約3kmを10分近くかけて、新村駅に着く。昨日ソウル郊外線に乗って着いた駅である。

新村駅でかなり多くの客が乗ってくる。ここからは毎時0分発の1時間おきダイヤである。

2駅先の水色駅構内にある車両基地からソウル駅に出入りする長距離列車と数多くすれ違う。これでは、新村駅からソウル駅まで行く定期列車をほとんど運休にさせる意味があまりないのではと思ってしまう。



途中ですれ違ったセマウル号。
水色車両基地からソウル駅へ回送中。

 

思わぬハプニング

で、ここで思わぬハプニング。

カメラを取りだして、車窓の景色でも撮ろうと思ったところ、なんとカメラが壊れて動かなくなってしまった。昨夜の仁川球場のあたりから、なんか怪しい動きをしていたが、こんなところで壊れるなよ。この先、国境近くの臨津閣まで行く予定なので、何とかしないといけない。

とっさに手元の時刻表を調べ、折り返してホテルの部屋に置いてある予備のカメラを取りに行くことにした。

ちょうど信幸(ヘンシン)駅に着いたところだったので、列車から飛び降りる。
信幸駅は、西側が団地群、東側が建設中の新幹線基地、というロケーションの片面ホームの駅であった。無人駅かと思ったが、プレハブのような駅事務所の中に駅員がいて、折り返し新村までの切符を買う。駅員は「あれ、今来たばっかりなのにもう帰るの?」という顔をしていた。

信幸のとなりの綾谷駅ですれ違って来た新村行きに乗る。20分ほどで新村着。昨日と同じように、新村の繁華街の中を歩いて地下鉄梨大駅まで行き、地下鉄に乗ってホテルに戻り、予備カメラを取りだして再び地下鉄で梨大駅へ。悔しいのでさっきと違う道を歩いて新村駅に行く。
まさかこの街の中を1往復半もするとは思わなかった。




ソウル→ムンサンの切符。
1500ウォンが1700ウォンに改訂されている。
結局信幸(ヘンシン)駅から先がムダになる。





信幸から新村に戻るために買った切符。
これも1000ウォンが1100ウォンに改訂されていた。





リベンジ。
新村→ムンサンの切符。

 

再び京義線に乗る

新村駅に戻ったのは10:40頃であった。毎時0分発なので、20分ほど時間がある。再びムンサンまでの切符を買い、切符売り場横の自販機でジュースを買っていたら、改札口の外にいた駅員さんと目が合って、「もう中に入っていいですよ」というジェスチャーをした。



新村駅
 

ホームには5両編成のムンサン行き列車が発車を待っていた。いつものように、車掌に目がつくように写真を撮り、車内に戻ってくると、いきなりその車掌さんに「日本の方ですか」と日本語で話しかけられる
なんとこの車掌さん、日本語がしゃべれるようだ。
「日本のどちらから来たんですか」とか「韓国にはいつ来られたんですか」とか話しているうちに発車時間が来たので、車掌さんは乗務員室の方に戻っていった。

11:00、発車。結局2時間のロスである。
すでに3回通って、見慣れた景色が展開する。さっき降りた信幸駅の次が綾谷駅で、ここから昨日乗ったソウル郊外線が分岐する。しばらく両線は平行するのだが、3両の貨車を連結した貨物列車とすれ違った。
さらにその次の駅が地下鉄3号線と相互乗り入れしている一山電鉄線との接続駅、大谷駅。電鉄線の高架下にある片面ホームの無人駅で、東北地方とかにある新幹線接続のローカル線駅のようである。
ここから先も、やや田畑が多くなったにせよ、やはりソウル近郊の団地群が数多い。建設中のものもある。そういう団地は主に左側にある。そちらの方には先ほどすれ違った一山電鉄線が走っている。



沿線はこういう景色のところが多かった。
 

11:56、久々に「新興」ではなく、古い街中にある金村(クムチョン)着。かなり大きな町で、やや混み合っていた車内がだいぶすいてしまう。
金村からは田んぼが多くなる。そんな田んぼの中に進行方向と直角に城壁のようなものがいくつかあって、線路のところはトンネルになっている。これが話に聞くところの「北が攻めてきた時」の侵攻を遅らせる「壁」なのか、と思う。だいぶ国境に近づいてきた。

12:12、定刻より2分早く終点ムンサン着。構内は大拡張工事中で、なんと6番線まであった。ただし、現在使われているのは駅舎寄りの1,2番線のみであった。

 

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