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 Aの対外的接触が帰属意識を高めるのは、その際に外部の人びとから良かれ悪しかれ同
一処遇を受け、集団成員が運命を共にしていることを自覚するからである。企業や学校な
どの社会的評価が高ければ、それらに所属する成員が社会的に信用されて、プラスの帰属
意識をもつことになる。反対の場合でも、成員が集団から簡単に離脱できないときには、
同類の被害者意識から助け合う結果として、マイナスの帰属意識がプラスに転化する例が
少なくない。
 Bの要因についてフィアカントは、「個人の多様性が高ければ、眼が個人にむけられ、
集団が隠れるのにたいして、成員のそのような斉一性は、個々の集団成員の中で一般的な
もの、すなわち集団を把握するのを容易ならしめる。」(3D,p.369)と述べている。集
団成員の外見的な斉一性、すなわち体質や行動様式の類似は、対外的接触で受ける処遇を
同一化するだけでなく、同類相寄って勢力を拡大するときの仲間の標識として、重要な意
味をもっている。
 Cの緊密な集合とは、具体的には、小集団では会合・合宿・小旅行のようなものを、大
集団ではメーデーの集会のようなものを意味していると考えられる。どちらにしても集団
成員の集合は、相互理解のための接触の機会を与えるばかりでなく、集団内外の人びとの
視覚や聴覚に訴えて、集団の存在を知らしめる機会でもある。それに参加した成員は、自
分と同じ仲間がそこに多数いるのを見て、集団への所属を改めて自覚し、意を強くするで
あろう。


〔参考文献〕3
 @ Homans,G.C.; The Human Group, 1965
 A デュルケーム『社会分業論』1978年、青木書店
 B Simmel,G.; Soziologie, 1958 
 C Newcomb,T.M.; Social Psychology, 1959 
 D Vierkandt,A.; Gesellschaftslehle, 1923






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