■2002年9月16日〜9月30日
□9月30日(月)
●小川勝己『まどろむベイビーキッス』★★★★
イロモノかと思って油断していたら、意外と良かった。『眩暈を愛して夢を見よ』が「新本格」といえる程度には、「新本格」っぽい作品。巻頭に登場人物たちが働いているキャバクラ「Baby Kiss」の見取り図が入っていたり、今時珍しい○○○トリックが使われていたりと、この作家の「ミステリ」に対する距離感は舞城王太郎とはまた違った意味でおもしろい。
昨日の日記に書いたように2ちゃんねるネタが満載なんだけど、まあ、そのへんはあくまで雰囲気づくりというか、ある種のリアリティを描くための風俗描写に過ぎず、冒頭から中盤にかけて語られる細かなエピソードが、終盤の展開におもしろいように繋がっていく構成とか、三人称多視点のメリットを有効に活用している話法とか、エンターテインメント小説としての土台がしっかりとしているため、非常に楽しめた。
不満点をあげれば、掲示板はやっぱり横書きだろう、とか、プロローグとエピローグの効果がいまいち薄い、とか、「言葉」の過剰さにおいては現実の模倣の域を超えていない、とかいろいろあるけれど、読んで損のない良質なミステリだと思う。
以下、10/2に追記。ネタバレにつき、完全伏せ字。
この小説に仕掛けられたトリックがすぐれているのは、真相があきらかになった瞬間、それまでネット(仮想現実)/現実という2つのレイヤーで構成されていると思われていた物語の構造そのものが無効になってしまう点にあって、その意味でも「トリックの必然性」は充分にあると思う。
つけくわえれば、作者はこのトリックを演出するうえで、読者の目をSHIHOの正体に向けつつあっさりとその正体を明らかにしてしまったり、掲示板の常連であるシャララ=留美という小トリックを仕掛けることによって、自然と読者の思考がネット/現実という二重構造にとらわれるよう仕向けている。
もっとも、私はこのあたりの展開のなかで驚いたのは、ちひろの正体よりむしろ、留美があっさりと殺されたこと(一方の主人公だと思っていたので)と、ちひろが「ケイのことは好きだった」ということだったりするんだけど。
□9月29日(日)
「PSO日記(仮題)」の正式タイトルは「犬が星見た ラグオル旅行」に決まりました。
なぜ武田百合子なのかというと、単に「好きだから」という理由なんですが。はなからタイトル負けすることはわかっているので、まあ、気楽にやります。
一応、オンラインでの冒険がメインになる予定で、現状はあくまで仮オープンのつもりです。10月3日にブロードバンドアダプタは届く予定ですが、実際には週末からの更新になると思います。
小川勝己『まどろむベイビーキッス』を読みはじめる。「狂乱西葛西日記」によると、「史上初の2ちゃんねるノワール」らしい。実際、「おまえもな」とか「小一時間ばかり問い詰めたかった」といった文章がそれほど不自然ではない形でまぎれこんでいて、思わずにやりとしてしまう。
□9月28日(土)
綾辻行人『最後の記憶』読了。
『黒猫館の殺人』あたりから気になりはじめたんだけど、結末部における情報提示の手際が悪くて、肝心のサプライズがうまく機能しなくなっていて、なんだかもったいないなぁ、と思うことが多い。この作品も同じような歯痒さを覚えた。
感想はまた改めて後日アップするつもりだけど、ホラーとしてもミステリとしても中途半端だなぁ、という印象。
ところで、昨日の日記で、「ようやく第三章に入ったところ」と書いたのは、「III部」の間違いでした。全然、違いますね。
ピクセラのビデオキャプチャボード「Capty TV/PCI」をPowerMac G4購入時のポイントを使ってゲット。目的のひとつはもちろん「PSO日記(仮題)」用に画面のキャプチャをすることだったんだけど、ここで誤算がひとつ。ゲームキューブをS端子で直接ビデオキャプチャボードに接続して表示すると、1秒くらいのラグが生じるのだ。S端子からの信号をMPEG1なりMPEG2なりにエンコードしたデータを画面に表示しているわけだから、まあ、考えてみれば当然なんだけど、これではアクションRPGはプレイできない(もしかして、Windowsだとリアルタイムで表示できたりするんでしょうか?)。
結局、現状では、ゲームキューブはテレビにつなぎ、テレビの出力端子経由で画面を取り込んでいる。S端子からの入力ソースを2系統のS端子に出力する分配器を探してみたんだけど、単純に切り替えのみの、いわゆるセレクタはいくつかあるんだけど、分配器となると非常に高価だったり、あったとしてもビデオ端子のみなので、結局、上記のテレビからの出力のキャプチャで妥協することにした。
というわけで、「PSO日記(仮題)」も更新。
□9月27日(金)
現在、綾辻行人『最後の記憶』を読書中。
内省的で自閉的な男性の語り手と、活発で、ともすると停滞しがちな物語を動かす原動力となる女性、という登場人物の配置には正直なところうんざりするし、回想的な語り口なのはいいとしても、あまりに頻繁に現前性を阻害する語り手の意識が非常にわずらわしい。
ようやくIII部に入ったところなんだけど、主題の一部はすでにあの作家のあの作品に先回りされているような気がしなくもない。う〜む。
作家に聞こう:高橋源一郎
とりあえず、『「名探偵」小林秀雄』の続きは? とつっこんでおきたい。
□9月25日(水)
昨日までまったく知らなかったんだけど、富士通のハードディスク不具合の件て、かなりのおおごとになっていたんだな……。PC Watchの「HDD不具合問題リンク集」から、各社の対応を見ることができる。富士通の製品はもちろんのこと、NEC、IBM、SHARP、東芝、COMPAQなどのメーカー製PC、周辺機器メーカーの外付けハードディスクにもかなりの数が供給されていたようなので、心当たりのある方はチェックしたほうがいいかもしれない。
ついでに、もしかしたら誰かの役に立つかもしれないので書いておこう。
私のiMac(Slot Loading)の場合、問題の所在がはっきりと判断できず、ハードディスクが壊れたことは結果として事実なのだが、その原因はむしろ本体にあるのではないかと考えていた。
というのも、CD-ROMからの起動ができなかったからで、「C」起動をしても、最初の数秒こそCDの回転音が聞こえるものの、すぐに止まってしまうので、電源かマザーボードに問題があるのではないかと思ったのだ。また、たまたま起動した際に、メモリチェックで引っかかったりもして(これは、どうも作業中に壊したらしいのだが)、問題の切り分けがうまくできなかった。
結論をいえば、iMacの場合、ハードディスクの不具合で、CD-ROMからの起動ができなくなる、という状態がありうるようだ。iMacでは、光学式ドライブとハードディスクがリボンケーブルで繋がれATAバスを共有しており、今回の富士通製のハードディスクの場合、ハードディスクの基盤上のチップが破損しまうため、ドライブがどちらも認識されなくなってしまうようなのだ。
ちなみに、PowerMac G4のATA/66バスに富士通製ハードディスクと、もう1台のハードディスクを接続したところ、やはりどちらのハードディスクもシステムから認識されなかった(もちろん、後者1台のみ接続した場合は、問題なく認識される)。これと同じ症状だと思われる。
あいにく私はハードウェアにかんしてあまり詳しくないので、これはごくあたりまえのことなのかもしれないが、少なくとも私は今回の不具合の情報を知るまで、ハードディスクの不具合によって光学式ドライブが認識されないという可能性に思い至らなかった。他にも私と同様の方がいないとも限らないので、憶測をまじえた文章ながら書いておくことにした。
あきらかな間違いがある場合、指摘していただけると助かります。
□9月24日(火)
これだったのか……。
去年の4月に換装したiMacのハードディスクは富士通製。型番はMPG2409ATで、2001年3月の製造。ビンゴ。
OEM製品だからメーカーは無理としても、一応、期限がきれているものの販売元の保証書があるから、連絡したら交換してもらえるだろうか……。
□9月23日(月)
PSO日記(仮題)は地味に更新。
実はまだ読んでいなかった森博嗣・原作/皇なつき・漫画『黒猫の三角』をようやく読んだ。『赤緑黒白』に再登場する秋野って、この作品に登場していたんだな。すっかり忘れていた。
小説はおそらく再読することはないと思うので、いっそのこと、シリーズ全作を漫画化してくれないだろうか。って、それは無理か。
で、巻末に収録されている森博嗣の「あとがき」に「Vシリーズ全10巻」という記述があった。全15作というのは妄想だったのだろうか? しかし、ソースを求めて検索すると、全15作だと書いている方がほかに数人いたんだよなぁ……。
再度、調べ直してみたら、どうも私が読んだのは2ちゃんねるの森博嗣スレッド(Googleのキャッシュ)だったみたい……。
結論としては、やはり〈Vシリーズ〉としては全10作が正解。
次は〈S&Mシリーズ〉と〈Vシリーズ〉が物語として合流した作品になるのかもしれない、などと妄想してみる。
●森博嗣『赤緑黒白』★★★
というわけで、〈Vシリーズ〉完結編。
これは森博嗣版『羊たちの沈黙』? と感じたのは、たんに収監されているシリアルキラーが現在進行形の事件についての助言役として登場するからだけなのかもしれない。しかし、例えば『サイコメトラーEIJI』とか『踊る大走査線 THE MOVIE』といったエピゴーネンと比較して、特別に優れているとも思えなかったりする。
ラストはちょっと予想外だったんだけど、私には正直なところ、真賀田四季のすごさというのがよくわからなくて、「天才」の描き方としては、むしろ西尾維新のカリカチュアされたキャラクタのほうがしっくりとくる。いや、まあ、作者がそのキャラクタの「わかりやすさ」を排除しようとしている意図はわかるんだけれども、それが作品のおもしろさに貢献しているかというと、個人的には疑問だと思う。
あ、そういえば、森博嗣もたしかサリンジャーが好きだったような……。
□9月22日(日)
サイトの方向性を見失いつつある今日このごろ。まあ、それもまたよし。
●島田荘司『魔神の遊戯』★★★
文藝春秋の〈本格ミステリ・マスターズ〉第1回配本の1冊で、御手洗潔シリーズの最新作。ここ数年、何となく島田荘司の新刊を読まなくなっていたので、個人的には『龍臥亭事件』以来の長編小説ということになる。
引きちぎられたバラバラ死体のパーツが、次々と奇妙な場所で発見される。実質的に物語で起こる出来事は、ほとんどそれだけといっても過言ではなくて、にもかかわらず、読んでいて決して退屈でないのはさすがだと思う。
もっとも、メイントリックはわりと早い時点で見当がついてしまうし、「手記」で提示しようとしている「幻想的な謎」も、真相との整合性を重視したせいか、馬鹿馬鹿しいまでのケレン味に欠けるあたりに若干の不満を感じる。
個人的には、荒唐無稽だとしても、やはり、「魔神」の姿を目に見える形で作中に登場させてほしかったなぁ、と思う。物理トリックの解明がごくあっさりと済まされてしまうのも、ちょっと残念。
□9月21日(土)
なんだかかんだいいながらも『ファンタシースターオンライン エピソード 1 & 2』にはまりつつある。現在、レベル27で、エピソード1はハードの森まで、エピソード2はノーマルの中央管理区までクリア。ノーマルのラスボスでは、レベル23なのに、なぜか第3段階のバータ系(氷魔法)の攻撃で瞬殺されてしまい(どうも、複数回ヒットしてるっぽい)、結局、他のステージをまわったりしてレベル25まであげてからようやくクリア。
「PSO日記(仮題)」を暫定的に開始。不定期更新です。
森博嗣『赤緑黒白』読了。このオチって、森博嗣の作品をほとんど読んでいる人じゃないと意味不明なんじゃなかろうか。
え〜と、〈Vシリーズ〉って全部で15作の予定で、10作目でとりあえずひと区切り、という文章をどこかで読んだ覚えがあるんだけど、ソースが見つからない……。
□9月18日(水)
なんだか最近、非常に読書がスローペースで、島田荘司『魔神の遊戯』読了後に読みはじめた森博嗣『赤緑黒白』もまだ読み終えていません。別に『ファンタシースターオンライン エピソード 1 & 2』ばかりやっているというわけではないんですけど。ただ、ゲームをやっている時間より2ちゃんねるのネットゲーム板を見ている時間のほうが長いということだけは確実です。て、駄目じゃん。
ほしいものメモ。
SANYOの動画デジカメの最新機種「DSC-MZ3」。とうとうVGAサイズでの30フレーム/秒を実現。ニッケル水素電池がリチウムイオン電池になり、旧機種の最大の弱点ともいえるデザインも改善された。これで実売価格が3万円台だったら間違いなく「買い」だよなぁ。
しかし、マイクロドライブもほしくなる罠。
余談ですが、SANYOは意外なことにデジカメ市場で生産シェア世界一を誇るメーカーなのです(デジカメ好きな方はご存じでしょうけど)。
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