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■2003年6月16日〜6月30日


6月29日(日)
 続きです。
 日記中に全文をおくのはやめました。

6月27日(金)
 久しぶりに小説の感想でも書いてみる。


 生垣真太郎『ハードフェアリーズ』読了。『フレームアウト』で第27回メフィスト賞を受賞した著者の第2作。映画にかんする蘊蓄+ミステリという路線は前作と同じ。
 バーの地下室で起こった事件。3人の男が銃によって死に、1人の女が残った。女の語る「真相」にふとしたきっかけで疑問を持った男は、調査をはじめる。それから20年後、映画祭の応募作品の中に、その事件を再現したフィルムがあった。いったい誰が、何のために?
 これは長い。いや、実際は2段組の460ページだから、それほど長い小説というわけではないんだけど、読んでいても、少しも物語が先に進んだ気がしなかった。
 そもそも、バーで起こった事件の「真相」に語り手(の1人)が疑問を抱くきっかけというのは「
銃声の数」なんだけれど、これはどちらかというと『毒入りチョコレート事件』風の多重推理もの向きの謎ではないかと思うのだ。ところが、この物語の語り手(の1人)は、事件を充分に検討することもなく、ある特定の仮説に向かって独自の捜査をはじめる。物語前半のほとんどは、その特定の仮説を宙づりにしたまま素人による調査に費やされ、結局、事件についてはほとんど明確にならずに物語は20年後に引き継がれてしまう。
 映画祭の一次審査の担当であるもう1人の語り手は、まあ、確かに現実的ではあるのだろうけど、そもそも20年前の事件のことを知らず、読者にとっては既知である事件の再現フィルムと、かつて起こった事件との関連を知るところからつきあわされることになる。
 小説にとって効率的なのが必ずしも良いことではないけれど、この作品の場合は、もうちょっと効率的な構成を重視しても良かったんじゃないかと思う。読後、不要なシーンがやたらと多かったという印象ばかりが残っている。

6月23日(月)
 どうも最近、自分で自分の首をしめるようなことばかりをしているような気がします。


 えーと、ヘリオテロリズムでの話なんですけど、「髭 ボディービル」で検索してきた人は、何を探していたんでしょうか? たいへん気になります。

6月22日(日)
 前回はこちら
 まとめて読むには、こちら。とりあえず、適当に流し込んでつくったので、あとでインデックスを作成して整理します。一応、恥ずかしいタイトルロゴもつくりました。


 購買で昼飯のパンと牛乳を買って教室に戻る途中、購買に向かう坂本に出くわした。授業が延びて出遅れた、と坂本は苦笑して言い、悪い、急ぐから、と言って走り去った。どんなに急いだところで、めぼしいパンは売り切れているだろうけど、それでも急いでしまう気持ちはよくわかる。坂本を見送り、教室に戻ろうと踵を返したところで槙田に呼び止められた(正確にはそのときはまだ名前を知らなかったけど、顔はよく知っていた)。
「こんにちは。はじめまして」と槙田は言い、自分のクラスと名前を告げた。
 どうも、とぼくは曖昧な言葉を返しつつ、マキタトモカという名前を頭の中で反芻した(槙田朋佳という字を知るのは、もう少し先になる)。
「ちょっと教えてほしいことがあるんですけど」
 初対面だというのに槙田の態度には、まったく物怖じしたところがなかった。
 ぼくは表面上は平静を取り繕っていたものの、槙田とはクラスも違うし他に接点もなく、一方的に自分が知っているだけだと思っていたので、突然声をかけられたことにかなり動揺していた。なにしろ、どうやって話しかければいいのかとずっと頭を悩ませていたのだ。妄想が現実となったような状況に、喜ぶよりも先に猜疑心がわきおこった。これは何かの罠かもしれない。
 いや、それはないだろ。
「さっき話してた眼鏡かけた人って、知り合いですよね?」
 ぼくは縁なし眼鏡をかけた坂本の顔を思い浮かべながらうなずき、所属している部の先輩だと説明した。あ、失敗した、と思ったけど、もう遅い。
「何部なんですか?」
 予想どおりの質問が返ってきた。ぼくは何とか適当にごまかす方法を考えようとしたものの、すぐにあきらめた。
「……漫画研究部」
「へえ、漫画を描くんですか」
 世の中には漫画を描かないでもいい「漫画研究部」も存在するのかしれないけど、少なくとも、ぼくの所属している漫画研究部では、漫画を描くことが義務になっている。部員が少ないのは、そのせいかもしれない。
「やっぱり、みんな絵が描けるんですよね?」
「そりゃあ、まあ」
「わたし、絵を描くのへたなんですけど、入部できません?」
 予想外の言葉に驚きながら、あわてて考えた。槙田の意図はよくわからないけど、もし槙田が漫画研究部に入れば、必然的に週に何回かは部室で顔をあわせることになる。今日のような突発的なものではなく、とりあえず日常的な接点ができる。これはぼくにとって、かなり大きなメリットだった。
「絶対、大丈夫」と請け合った。なにしろ、ただでさえ部員が少ないのだ。先輩たちも、歓迎こそすれ文句を言うはずがない。実をいえば、絵のうまいへたは大きな問題ではなかった。槙田の気が変わらないうちにと、強引に今日の放課後に一緒に部室に行くということで話をまとめた。
「あとで教室まで迎えにいくから」
「あ、肝心なこと聞き忘れてた」槙田は早口に言った。「先輩の名前、教えてもらえます?」
 ようやく槙田の意図を察した。
 かなり鈍いね。
 坂本晃、とぼくは坂本のフルネームを答えた。槙田はうなずきながら復唱して、「ありがとう」と笑った。じゃあ、と言って、そのまま立ち去ろうとするので、あわてて呼び止めた。
「ぼくは今泉。よろしく」つくり笑いを浮かべて言った。
 興味ないかもしれないけど、という皮肉はさすがに卑屈すぎると思って言わなかった。


6月16日(月)
 うろ覚えで書くけど、1X歳(←具体的な数字を忘れた。14歳だっけ?)からの読者からの手紙で登場人物が1X歳らしくないといわれて、私だって昔は1X歳だったのだから、それくらいはわかる、みたいなことをあとがきで書いていたのは確か栗本薫だったと思うけど、実際のところ、自分が10代だったころの感覚をどの程度正確に覚えているものだろうか。私はほとんど覚えていない。


「ノスタルジックな少年時代の回顧もの」はあまり好きではないんだけど、なぜか「学園もの」は好きで、きわめて個人的な印象を述べれば、「ノスタルジックな少年時代の回顧もの」は屋外を舞台にした開放的な物語というイメージがあって、一方の「学園もの」は当然のことながら屋内を主な舞台とした閉鎖的な物語というイメージがある。また、前者はあらかじめ「回顧もの」と(私が)いってしまっているくらいだから、当然、大人になった登場人物による回想という形式が思い浮かぶし、後者は「現在形」の語り口が何となく自然な気がする。


 えーと、続きは一応、毎週日曜日にアップする予定です。

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