第11回(2000年)なんごサウンドコースト:(Beatles:-Nowhere Man-)

 今年(2000年)のテーマは、Music of the House 〜胃腸にやさしい音楽です。

 「音楽の薬」なる言葉を聞くと、不思議な説得力を感じます。文学の世界で言うならば、例えば宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」の一場面に、チェロの中に入ったコネズミが、楽器の振動によって体を揺すぶられ病気が治るところがあります。また、物語の後半では、猫に嫌がらせをしようと思って、甲高く雑音のように弾いた「インドの虎狩」なる曲を演奏することで、オーケストラの万年補欠の主人公が、観客を魅了する表現力を会得してゆくクライマックスがあります。聴き手及び弾き手の双方にもたらされる「音楽の効能」、が当にこの物語のテーマであったように記憶してます。(定かではありません、なんせ、数十年前に読んだだけですから、、、。)

 ところで、「薬の効能」と言った場合に、思い描くのはなんといっても、「漢方薬」でしょう。「特にからだの具合が悪いところはありませんの。」と言えば、「バカに附ける薬は無い。」と言われてしまします。しかし、多かれ少なかれ、現代の日本人の共通の問題(病気)には「胃痛」があります。保健科学の先生方に言わせると、草食から肉食への現代人の食生活の変化とか、堅いものを食べなくなり柔らかいものばかり食べるので、歯が退化してしまいそれで胃が痛くなるのだと言う論説も良く読みます。しかし、日本人に限らず、先進国と呼ばれる国に住む現代人にとっては、動物学的な進化(退化)論よりも、人間社会における、「ストレスによる神経性胃炎」の方がより説得力があります。もっとも、「欲しがりません勝つまでは」、とか、「攻撃は最大の防御」なる言葉に代表される高度成長時代には、このようなストレスよりも、過去の蓄積生活学がもたらす、「免疫力」によって、ストレスなる言葉も無かったのではないかと思います。

 病気の「原因」が解れば、次は「治療法」を探します。しかし、「治療は休むこと」と言われてしまえば、休めない賃金労働者は途方に暮れるだけです。そこで、「予防」の話になります。正月明けに食べる、「七草粥」。はっきり言ってまずいですが、「胃に優しい」と言われると食べたくなります。中華料理の薬膳料理も高くてまずいけれども、メニューに有ればつい頼んでしまします。「f分の1;ゆらぎ」とか、「いやし系」音楽なんて今風の音楽も同じです。

 「食べず嫌い」とよく言われるように、音楽活動にも似た側面があります。「エレキギターなんか弾くのはドロップ・アウトした輩だ!」と言われたのが30〜20年前。「休みの日ぐらい、名曲をゆっくり聴いていたい、素人音楽なんて、、。」と思っている方がたくさん居ます。そのように生きていたかつての自分を描いたのも、2000年のサウンド・コーストのテーマ画、「耳栓をした音楽家」です、、、。一人でも多くの人が公民館へ出かけて、ほんの少しでも自分にプラスになることが発見できたなら、耳栓も外れるでしょう。サウンドコーストの真価でしょう。

耳栓をした音楽家 実行委員裏話-2000


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