読書の記録(1999年 7月)

「雪が降る」 藤原 伊織  1999.07.01 (1998.06.15 講談社) お勧め

☆☆☆☆☆

@ 「台風」 ... 今日会社の中で殺傷事件が起こった。上司の部下に対するいじめが原因だった。それを見て,自分が子供の頃,親が営むビリヤード場で起こった殺人事件を思い出した。殺人犯となってしまったピアニストとの会話にかつての理想の姿が浮かんでくる。本当の強さって何だったんだろう。
A 「雪が降る」 ... 同期でエリート社員の息子からのメールには,「僕の母を殺したのは,あなたですね。」とあった。確かに彼の母親を殺したのは自分かも知れない。訪ねて来た高校生に自分と彼の両親との過去を語る,彼への言葉の中で,嘘はつけなかった。
B 「銀の塩」 ... アパートの隣に住むバングラデシュの男性と,夏の別荘地へ出掛けた。そこで知り合った少女,不法滞在の外国人の夢,そして彼の謎の行動。そして彼らはまた別の道を歩んでいく。この主人公って,「テロリストのパラソル」の島村なんだろうか。
C 「トマト」 ... 自分は人魚だと言い張る女性。トマトと言う食べ物を食べたくて,人間の姿になったんだって。ちょっと異色の一作。
D 「紅の樹」 ... 殺傷事件を起こした後,組を抜けた男は2年半の逃亡生活を送った。彼がひっそりと暮らすアパートの隣に引越して来た,若い母と娘は借金取りに追われていた。
E 「ダリアの夏」 ... デパートの配達員がお中元のビールを届けに向かった一家の庭先には一面ダリアが咲き誇っていた。そこで出合った不思議な家族。息子の野球の試合を母親と一緒に見る事になる。そしてその家族の本当の姿を知る。

 何だか心をグイグイ揺さ振って来るような短編集だ。「テロリストのパラソル」「ひまわりの祝祭」と同様に,主人公は中年男性。彼らは世の中との折り合いがうまく行かず,どこかに過去の夢を引きずっている。そして現実の世界での出来事を直視するでもなく,だからと言って逃避している訳でもない。表現が難しいんだけど,「木枯らし紋次郎」の持つニヒリズムに通ずる雰囲気が感じられる。それまでの人生の積み重ねだと言うには,悲しすぎる。久し振りに「切れ」のある短編に出合った満足感を感じた。なかでも表題作が秀逸。

 

「チョコレートゲーム」 岡嶋 二人  1999.07.02 (1985.03.05 講談社)

☆☆

 作家の近内泰洋は妻から,中学3年生の息子である省吾が最近学校に行っていない事を知らされる。息子の体に残された無数のあざ,反抗的な態度,パソコン等の高価な持ち物。そして省吾の同級生である直之が他殺死体で発見される。そして同じく同級生の英一の死,省吾の飛び降り自殺。事件は二人を殺した省吾の自殺と言う形で収束してしまう。しかし捜査結果に疑問を持つ近内と雑誌社の蜂須賀は,クラスメートが残した「ジャック」,「チョコレートゲーム」と言う言葉から,ある大胆な仮説を立て調査に乗り出す。

 同じく中学生の息子を持つ身としては,やりきれなさが残る作品ではある。しかし知り合いの小学生の首を切り犯行声明を行ったのも,また学校内で教師をナイフで刺し殺したのも中学生だった。ノミ行為くらいやり始めたとしても不思議はないよな。この作品は15年ほど前に書かれたものだが,荒廃した中学校の姿を先取りしたものだと言う事だろうか。しかし勉強ができる子よりも,喧嘩の強い子の方が幅を利かせて良さそうなものだと思う。そういう意味で,胴元になっていた貫井が絶対的な力を持っていたと言うのが意外だ。大人の社会同様,子供の世界も同じなのだろうか。それにしても,親も教師も情けないよなあ。

 

「ロートレック荘事件」 筒井 康隆  1999.07.03 (1990.09.25 新潮社)

☆☆☆☆

 浜口修は8歳の時,不注意から従兄弟の重樹に怪我を負わせ,彼を不具の小人にしてしまった。その後,重樹は著名な画家となっていった。ある日,友人である工藤忠明とともに,ロートレック荘と呼ばれる軽井沢の別荘に招待された。この別荘は以前,重樹達の親の持ち物であったが,親達の事業の失敗から,今は人手に渡っている。彼らを別荘で待っていたのは,所有者の木内氏夫妻と3人の若い女性。財産家である彼の娘の典子,やさしい寛子,勝気な絵里。3人とも彼を何とか自分のものにしたがっていた。最初の晩,寛子が銃で殺される。そして警察が取り調べている中,さらに典子も絵里も同様に殺されてしまう。

 筒井康隆である。本来はSF作家(?)なのだが,「富豪刑事」と並んで本作も推理小説としての評判はなかなかの様だ。確かに,子供の頃の不幸な事故と言う設定,建物内の様々な仕掛け,そして何よりも意表を突いた真相が面白い。フェアーで無いと言う感じがしないでも無いが,最初から読み直したり,見直したりすれば,伏線はしっかりと記されている。ちょっとネタバレだが,この「見直したり」がポイントか。そんでもってロートレックの絵でもじっくり見てくれ。それにしても単なるミステリーのように見えて,障害者に対する偏見を皮肉ってるんですね。

 

「OUT」 桐野 夏生  1999.07.05 (1997.07.15 講談社)

☆☆

 深夜の弁当工場に勤務する雅子は,同僚の弥生から夫を殺したと告白される。何とか弥生を助けようとする雅子は,同じく同僚のヨシエと邦子の3人で,弥生の夫の死体をバラバラにして捨てる。死体の一部は警察に発見されるが,彼女等4人の元には捜査が及ばない。しかし真相に気が付いた貸金業の十文字は,雅子に協力を求めてくる。そしてバラバラ殺人の容疑者となってしまった事によって事業を失った男が,雅子に復讐しようとしてくる。

 うーん,何て凄いストーリーなんだろう。こんな馬鹿な話がある訳無い,と言いきれないのは,4人の主婦の置かれた境遇からなのだろうか。夫が女とギャンブルにのめり込んでしまった弥生は,主体性の無いお嬢さん育ち。内縁の夫が借金を残して逃げてしまった邦子は,見栄っ張りでだらしがない。皆から「師匠」と慕われるヨシエは,家出した娘と寝たきりの姑を抱えている。そして頭も良く冷静な雅子は,自分に無関心な夫と息子の3人暮らし。こんな状態じゃ,この位の事はするかも知れんなあ,と思わせる怖さがある。しかし彼女ら4人には,こうまでして守る家庭は無かったはずではないのか。それは判っていても,しがみ付かなくてはならなかったものが,崩壊した家庭だとしたら,この結末は彼女らにとって解放だったのだろうか。しかしちょっと理解できないナア。警察の追求も甘いし。

 

「パーフェクト.ブルー」 宮部 みゆき  1999.07.09 (1989.02.25 東京創元社)

☆☆☆☆

 蓮見探偵事務所に持ち込まれた,家出した諸岡進也と言う少年の行方捜しは簡単に解決した。進也を家まで送る途中,進也の兄であり,高校野球界のスーパースターの克彦が焼き殺される現場に出くわす。進也は蓮見探偵事務所の加代子や所長,犬のマサ等とともに事件解明に乗り出す。当初,自殺してしまった元野球部員による犯行と見られていたが,その裏には,製薬会社の人体実験と,それを元にした恐喝事件が潜んでいた。

 「心とろかすような.マサの事件簿」を先に読んでしまったが,登場人物はほぼ同じ。勿論,語りべは犬のマサ。糸ちゃんはまだ高校生なんですねえ。何となく東野圭吾さんの「魔球」の様なストーリーだなあと思いながら読んでいたのですが,最後のドンデン返しはちょっと強引か。宮部さんの作品ってストーリー自体は暗いが,登場人物で救われている作品が多いよね。ここでは進也君がいいキャラクターです。あと,加代ちゃんもねっ。宮部さんの描く少年の典型ですよね。この作品は宮部みゆきさんの長編第一作なのだそうだが,最初っから犬の視点で描くといった技できているのはさすがだ。結構難しいと思うのだが。

 

「ブルータスの心臓」 東野 圭吾  1999.07.12 (1989.10.31 光文社)

☆☆☆

 大手電気機器メーカーに勤める末永拓也は,産業ロボットの研究をしているエリート社員であり,オーナーの末娘である仁科星子の婿候補でもあった。しかし星子に近づく為に利用した雨宮康子から,子供の認知を迫られてしまう。そんな中,オーナーの息子である仁科直樹から,同僚の橋本を加えた3人での康子殺害を持ち掛けられる。彼らも拓也同様,康子から同じ要求を受けていたのだった。直樹が大阪で康子を殺害し,名古屋に出張中の拓也が死体を東京まで運び,橋本が死体の処分を担当する。しかし拓也が東京で橋本に引き渡した死体は,何と直樹のものだった。

 死体をリレーする事によって,殺害場所と死体の発見場所を変え,時間の差からアリバイ作りを行う。なかなか大胆な発想だ。共犯関係を最初に明示してあるので,アリバイトリックがどの様に見破られるかと言うストーリーなのかなと思っていたが,何と死体が首謀者のものになってしまうとは。誰が殺したのか,康子は何を知っているのか,警察の捜査はどうなっていくのか。何も判らないまま当初の目的を達成しなくてはならなくなった,拓也の動きに緊迫感があって面白い。しかし真相は...最初にロボットによる事故の記述があって,何らかの関係は示されているのですが,ちょっとその後の伏線が弱い様な気がする。

 

「天使たちの探偵」 原 ォ  1999.07.14 (1990.04.30 早川書房)

☆☆☆☆

@ 「少年の見た男」 ... ある見知らぬ女性のボディガードをして欲しいと,小学生から依頼される。女性を尾行している途中で銀行強盗に遭遇する。銀行の支店長は犯人の一人を射殺してしまう。
A 「子供を失った男」 ... 昔別れた女性に宛てた手紙を持っていると言う男からの脅迫電話。引き換え場所に立ち会った後,脅迫者の身元調査を引き受ける。
B 「204号室の男」 ... 娘の素行調査を依頼されて,その少女の尾行をしたら,何とその少女は,依頼主である父親の尾行をしていた。
C 「イニシャル"M"の男」 ... 夜中に間違い電話が掛かってきた。掛けてきたのはアイドルタレントで,これから自殺すると言う。
D 「歩道橋の男」 ... 女性の同業者が訪ねてきて,先ほど息子の行方調査を依頼した人に,嘘の報告をして欲しいと言ってきた。
E 「選ばれた男」 ... 謎の言葉を残して姿を消した少年の行方を,彼の母親の依頼で少年補導員とともに捜すのだが。

 ご存知,沢崎探偵シリーズの連作短編集です。ちゃんと探偵の仕事してるんだ。今回は子供が随所に出てくるんですけど,子供=天使と言う図式は,全く当てはまりません。タイトルは「悪魔たちの探偵」にした方がいいくらいです。どの話もかなり凝った作りになっており,短編にするのはちょっと苦しい気がします。ところで沢崎さんの言葉って,良く出来てますよねえ。これはハードボイルド系の作品に共通しているけど,何であんなに,言葉の中に皮肉を込めなければいけないんだろう。実際しゃべるとなると,かなり頭使わなくちゃいけないだろうし,間が持たないような,まあどうでもいいんですけどネ。

 

「地下街の雨」 宮部 みゆき  1999.07.15 (1994.04.25 集英社)

☆☆

@ 「地下街の雨」 ... 婚約者に裏切られ職も失い,地下街の喫茶店でウェイトレスをしている女性の前に,現れた一人の女。
A 「決して見えない」 ... 終バスを逃して,タクシーを待つ二人の男。なかなか来ないので家に向かって歩き始めるが。
B 「不文律」 ... 一家三人が車毎海に飛び込んで亡くなった。周りの人の証言から,無理心中の意外な動機が。
C 「混線」 ... いたずら電話を趣味にしている男。そして彼を見つめる少女。そして男は電話に飲み込まれてしまう。
D 「勝ち逃げ」 ... 叔母さんが亡くなった。生前はとっつきにくい人だったのだが,郵便受けには謎の手紙が残されていた。
E 「ムクロバラ」 ... 正当防衛で人を殺してしまった男が,事件を担当した刑事の元を訪れる。
F 「さよなら,キリハラさん」 ... 突然,家の中の音が消える。そしてどこからともなく表れた男。

 ホラーやらファンタジーやらバラエティに富んだ短編集。表題作がいい。何か,ハラハラ,イライラさせておいて,最後に心温まる作品。他はちょっとナア。

 

「堪忍箱」 宮部 みゆき  1999.07.20 (1996.10.30 新人物往来社)

☆☆☆

@ 「堪忍箱」 ... 問屋で火事が発生した。旦那も女将さんも家宝である堪忍箱を取りに火の中に入っていった。
A 「かどわかし」 ... 畳職人の元に一人の男の子が訪れた。料亭の跡取り息子の自分を誘拐して,両親から100両奪って欲しいと言う。
B 「敵待ち」 ... あるヤクザ者から命を狙われている男が,同じ長屋に住む一人の元侍にボディガードを頼むのだが。
C 「十六夜髑髏」 ... ある菓子問屋では,十五夜の次の月を見たらいけないと言う言い伝えがあったが,その日火事に見舞われる。
D 「お墓の下まで」 ... 一人の娘と二人の兄妹を引取って育てた老夫婦。3人の子供はそれぞれ秘密を抱えていた。
E 「謀りごと」 ... 長屋の差配が先生と呼ばれる男の家の中で死んでいた。そして先生は行方不明になっていた。
F 「てんびんばかり」 ... 幼い頃から姉妹の様にして育った二人の少女。内一人がお嫁に行ったあと残された一人の少女。
G 「砂村新田」 ... 家が貧しく奉公に出た少女がある日,一人の男に声を掛けられた。お母さんは元気かと。

 宮部さんが歴史物を書くのは知っていたけど,読むのはこれが初めて。生活がかつかつだったり,長屋や問屋は火事に見舞われたりと,ちょっとワンパターン。しかしどの作品も,ミステリーの要素をさりげなく持ち込み,良く出来た話になっていると思う。「お墓の下まで」で描かれている様に,皆何らかの秘密を持ちながら生きている様子,そしてその人達の暖かさが感じられていいですね。

 

「ファイアボール.ブルース」 桐野 夏生  1999.07.22 (1995.01.30 集英社)

☆☆☆

 弱小な女子プロレス団体であるPWPに所属する火渡妙子は,「ファイアボール」と呼ばれストロングスタイルのレスラーとして人気があった。そして火渡の付き人である近田は,デビュー2年目にして,いまだ勝ち星の無い弱小レスラーだったが,火渡を慕っていた。ある日,火渡の試合の相手であるジェーンが,試合開始直後にリングを去るという事件が起こる。そして新聞に載った,謎の外人女性の死体遺棄事件を知り,この女性がジェーンではないかとの疑問を持つ。

 女子プロレスの話と聞いて,ちょっと馴染めないかなあと思っていたのですが,面白かった。一応ミステリーの形をとっているんですけど,メインは火渡の生き方と,近田の火渡に対する憧れと葛藤ですよね。この二人が実によく描けていると思いました。女子プロって言うと,どうしても色物っていう感じを持ってしまいますけど,やっている方も見ているファンの方も結構真剣な部分てありますよね。作者はファンなのでしょうか。

 

「女たちのジハード」 篠田 節子  1999.07.23 (1997.01.30 集英社)

☆☆☆☆

 34歳になり,仕事を生きがいにするでもなく,さりとて結婚に憧れている訳でもない康子。女である事の不利を承知で,キャリアウーマンを目指す沙織。結婚相手の学歴や収入にこだわるリサ。男につくすタイプの美人でおとなしい紀子。保険会社に勤めるOLである彼女らが,仕事や結婚を通して変って行く様子を描く。男と別れた事を契機にマンションを購入し,偶然に知り合った脱サラのトマト生産者と出合う康子。特技である英語を活かそうとするが挫折し,アメリカで飛行士を目指す事になる沙織。望み通り東大卒の医師と結婚したが,ネパールで生活する事になるリサ。結婚に敗れ,再就職もままならない中,友人達の骨折りで就職した先で,公務員とあっさりと再婚した紀子。

 桐野夏生さんの「OUT」のOL版かなと思っていたんですが,全然違いましたねえ。登場人物全てを主人公に据え,決して「普通のOL」何て言う言葉で括れないと言う様な書き方は,どちらかと言うと宮部みゆきさんの「理由」を思い出させます。こっちの方が先だけど。この物語では,最初にそれぞれのキャラクターを,非常に判り易いパターンで登場させています。しかし徐々にいい面,悪い面を見せる事によって登場人物の人間臭さを際立たせていきます。最初に4人が登場し終えた時点での彼女らの印象が,様々なエピソードを経てそれぞれの結末を迎えた時には,全く変ってしまっている事に気が付きます。最初の好感度順は,紀子,沙織,康子,リサだったんですけど,最後では康子,リサ,沙織,紀子でほぼ逆になりました。この後,彼女らがどうなって行くのかが興味深く感じられました。一つ不満な点は女性を描く為にしょうがなかったんでしょうが,男性の描き方ですね。

 

「レベル7」 宮部 みゆき  1999.07.27 (1990.09.25 新潮社)

☆☆☆☆

 記憶を失って,マンションの一室で目を覚ました男女。部屋には大金と拳銃と,血の付いたタオル。何かの犯罪を犯した結果ではないだろうか,との恐れを抱きながら,自分達の正体を探る二人に近づいてきた,隣に住んでいる三枝と言う男。「レベル7まで行ったら戻れない」との謎の言葉を残して失踪した,みさおと言う女子高校生。彼女の行方を探る真行寺悦子。二つのストーリーの行き着く先には,ある精神病院と,昔に起こった別荘での殺人事件があった。

 二つのストーリーが同時に進行して行き,徐々に繋がって行く。一つは自分探しで,もう一つは行方不明者探し。何かわくわくしてきますねえ。こういった展開の場合,一つ一つ明らかになって行く真実と,読み進む度合いとのバランスが大切だと思うんですよね。過去を知っている人物の話や,記憶を失う前に書いた手紙によって,真実が明かされてしまうと,何か説明を聞いているみたいで,ちょっとどうでしょうか。ここらへんのバランスが絶妙だったのが「火車」だったと思うんですが。あと最後の場面は,ひねりすぎと言った印象を持ってしまいました。まるで逢坂剛さんの「百舌の叫ぶ夜」みたいでした。「パーフェクト.ブルー」などに登場した加奈ちゃんがちょっと出て来たのは愛敬でしょうか。マサは出てこなかったけど。だけどストーリー自体は大変面白かったですよ。

 

「とってもカルディア」 岡嶋 二人  1999.07.28 (1985.07.05 講談社)

☆☆

 テレビ番組の制作に携わる織田貞夫の元に,学生時代の友人である秋元が突然に訪れた。そして数日後,彼は横浜の公園で溺死体となって発見される。また織田の勤める会社に,死体無き殺人事件の話が持ち込まれる。織田は同僚の土佐美郷と二人でこの事件を追う事になるが,その過程で,秋元の事件が絡んでくる。

 かなり本格的な推理小説なんですが,それを感じさせないのは探偵役である二人の明るさのせいだろうか。この二人,上から読んでも下から読んでも同じ名前と言う,山本山コンビなのである。「七日間の身代金」に出てくる二人と似た感じなのだが,こちらの二人の方が好感が持てる様な気がした。「カルディア」と言うのはカメラの名前。軽くて,小さくて,扱い易くて,それでいて高機能。まるでこの小説の様なカメラだ。そしてこのカメラの特性が一つの鍵になっているのですが,知らなかった。