白神山地(世界遺産): 「ブナ林()

 春の音、といえば、宮城・・・さんの「春の海」(琴の曲ですが、これをギターで弾ける人が近所にいました。)や、20世紀の超作曲家・ストラビンスキーの「春の祭典」が有名ですが、Marco。さんの場合の春は、以下のように連想します。

@:「春の桜」とはキザな美辞麗句で受け入れがたいものです。「どろんこの雪解けのあぜ道」を、母に手を引かれて行くのが小学校の入学式。(特に北国の場合) 「ふきのとう」なら良いけど、「桜の園はよその国(本州)の出来事なので、卒業式の文集に書いてはいけません!」と教えられました。また、桜はバラ科に属する木なので、毛虫も付き物だと思います。それもまた春です。また、「ふきのとう」は、」ちょうど今頃の季節、尾瀬ヶ原へ通じる林道に出ています。

A:春の音と言えば、柱をゲンノウで叩いたり、鋸を弾く大工さんの音が思い浮かびます。イメージとしては、「雪解け」に近いのですが、「仕事始め」と考えるのは、農作業の延長かもしれません。あるいはまた、ドビッシューの「海」なんてのも、「漁り人」を連想させる一曲です。茅ヶ崎に引っ越してきたときに最初にかけたのもこの曲でした。春の雪解けとともに、ブナ林の根本には、以下の写真のような「首輪」が見られます。これを見てると、ストラビンスキーの「春の祭典」がぴったりなのです。「ズボッ」、と埋まる足音が演奏に参加していると感じます。平たく言うならば、「汗」とか、「泥」とか、「本能」、「労働」とかの言葉が感じられます。

B:一方、春と共に訪れる、「不愉快な音」は時たま感じることは有りますが、あまり覚えていません。ただ、「具合が悪くなる」ような音とは、逆に考えると「それだけ印象に残る音」でも有ると思います。きっと知らず知らずの発見が有ると思います。一目会ったその日から、お互いに、「あいつは嫌なやつだ」とお互いに思っている方々は、本当は同じも同士で、一般的には仲良くやって行けるものなのです。

【昨日見たブナについて】 エメラルドグリーン(*注1)を期待してきたが、緑になるのは後10日程先のようである。マテ山付近に着いた時であろうか、向こう側の斜面には、根元が熱を発するかのごときブナの純木の群れが、円盤にのっかった騎士を思わせるように行進していた。また、一本一本の木を注意深く観察してみると、枝の形がさまざまで、面白い物である。枝の最高地点が天に向かってまっすぐに延び、絵はがきのモチーフになりそうな物も有れば、重たかった雪のせいであろうか、地上へ出るなり直角に曲がり、再び天を目指して直角に曲がっているものもあった。この山で最もtypicalなタイプは、左右非対称型で、全体に、黒や緑の苔がへばりついたものであろう。右手を背中へのばし、弓矢を取ろうとしている弾き手の姿を連想させる。さてここで考えた。この軍隊の指揮者は誰だ?

 稜線に出る頃であったろうか。残雪の多いためであろうか、小枝の先だけが地上へ出ているパールホワイト(*注2)の若芽に出会った。不思議に思い立ち止まって周りを見渡すと、樹肌が同じ色をした大木が何本か有った。ここへ来る途中に立ち寄った、八幡平に見られた純白のブナの色とも少し違うように思えた。昨年の暮れ、工藤父母道氏との尾瀬戸倉での散策の中で、「ブナの木はなに色か?」との質問に対して即答できなかった事を思い出した。  パールホワイトの枝の先には、今にもはじけんばかりの真っ赤な成長点が飛び出していた。後一月もすれば始まるであろう、屋久島いなか浜のアカ海ガメの産卵婦の子宮を見る思いがした。このえだのさきから、エメラルドグリーンの歯(葉)が飛び出して空気にふれるのも、後一週間ほどであろうか。 

  (*注1)エメラルドグリーン  :元来この色は海の色を表す色として使われる事はあっても、森を表す色としてはふさわしくないと思っていた。しかし実際にブナ林の風景を色鉛筆なぞで描いてみるとき、この色の例えが良く解る。灰色や黒色、焦げ茶、オリーブグリーン等で樹肌をまず描き始めるだろうか。その次に葉を描き出すわけであるが、Grass Greenや黄緑、Dark Green等で着色し始める。しかし、これだけではもの足りず、葉と空気が解け合ったときの色として、エメラルドグリーンの必要性を感じる。実に美しい色である。

 (*注2)パールホワイト : 真珠のみならず、アワビやホタテに至るまで貝殻の内側にはこの色がこびり着いている。英語では、Avaronというとこの色をさす。これも同じく海の色を表すのが一般的である。

「ブナ」


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