「ドールズ―闇から来た少女」 高橋 克彦 2006.05.01 (1987.05.20 中央公論社) |
☆☆☆ |
盛岡市 で喫茶店「ドールズ」を営む月岡真司の7歳になる娘の怜は,雪道で自動車にはねられた。病院に運ばれ,ショックの為か言葉が出なかったものの,命には別状無かった。しかし入院中に様々な奇妙な症状が出てきた。子供とは思えないほど血圧が高かったく,動脈硬化を起こしたりする。そしてタバコを吸い,人形に異常な興味を見せる。そして老人の様な言葉を使って話し始めた。 シリーズ3作目の「ドールズ 闇から招く声」を先に読んでしまっているので,怜の身の上に起こった事は判っていました。この1作目は怜に宿ってしまった人物の謎を解くのが中心となっていますので,そういう意味では退屈してしまいました。やはりシリーズ作は順番通りに読みましょうね。この先は怜と言うか目吉が探偵役となっていくんでしょうが,今回は怜自体が謎となっていますので,叔父の結城恒一郎を中心に進みます。その中で人形にまつわる様々な話が出てきますが,ちょっと判りづらい。でも小さな女の子がタバコを吸ったり,昔の男の言葉を喋ったり,あんな絵を描いたりするのが,読んでいてしっくりこない気がします。また怜がこうなったのはてっきり交通事故が原因だと思っていたのですが,違ったんですね。
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「40 翼ふたたび」 石田 衣良 2006.05.03 (2006.02.23 講談社) |
☆☆☆ |
@ 「真夜中のセーラー服」 ... 事務所を訪ねてきたAV女優は,凋落したIT会社の元社長の再生を依頼してきた。 「4TEEN」は14歳の男の子の物語でしたが,こちらは40歳男性の話。広告代理店を辞めてフリー・プロデューサーとなった吉松喜一が主人公です。この作品,40代の男性への応援歌として書いたのだとしたら,やたらと安易な感じがします。話がやたらと上手く行き過ぎるんですね。苦悩を克服しての成功ではなくて,単に運がいいだけの話なんです。40代の男性じゃなくても,「そんなに甘いもんじゃないよ。」と言いたくなってしまうのではないでしょうか。最初の方で,「人生の半分が終わってしまった。それもいい方の半分が。」と言った言葉が出てきます。結構ショッキングな言葉ですよね。だからこそ結果はどうあれ,精一杯頑張っている,そして精一杯生きている40代男性を描いて欲しかったと思いました。
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「チョコレ−トコスモス」 恩田 陸 2006.05.05 (2006.03.20 毎日新聞社) |
☆☆☆☆ |
女優の東響子は,伝説の映画プロデューサー芹沢泰次郎がが芝居を手掛ける事を耳にした。何でも二人の登場人物だけによる芝居だそうで,主演女優のオーディションが行われるらしい。知り合いの女優は呼ばれているのに,自分は呼ばれていない事に,響子は焦りの気持ちを感じていた。そんな頃無名の学生劇団に一人の少女が入団した。舞台経験など全く無い彼女だったが,その天才的な演技で周囲を圧倒していった。 芹沢からの依頼を受けた脚本家の神谷,幼い頃から舞台に立っている女優の響子,そして大学の劇団に入った佐々木飛鳥。それらが密接に絡み合ってオーディションの場面に進んでいきます。ストーリーは変化が激しい訳ではなく,展開も予想通りです。でも退屈じゃないんです。それは演技の場面の描写が素晴らしいせいでしょうか。飛鳥の初舞台となる2回のゼロ公演とオーディションの場面。俳優が何を考え,何を表現しようとし,何を観客に訴えかけているのが,緊張感を持って描かれていきます。まるでその舞台が見える様です。私は演劇が好きと言うわけではなく,ほとんど観た事が無いのですが,そんな私でも舞台の様子が伝わってきますので,余程作者の描写力が素晴らしいのでしょうか。響子にしても飛鳥にしてもどちらかは,もう少し感情移入できるキャラクターにして欲しかったところです。
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「闇から覗く顔−ドールズ」 高橋 克彦 2006.05.08 (1990.10.20 中央公論社) |
☆☆☆ |
@ 「紙の蜻蛉」 ... 創作折り紙の第一人者の個展会場に置かれた,江戸期の手法で見事に折られた紙の蜻蛉。 少女・怜に転生した江戸時代の職人・目吉シリーズの2作目は,連作短編となっています。話の性格上しょうがないとは言え,怜達はやたらと江戸時代に関係する物事に接してしまいます。周りには極力目吉の事は伏せておきたいのに,目吉はペラペラ喋ってしまうし,相手も簡単にそれを受け入れてしまうのはどんなもんでしょう。少女の中に,甦った江戸時代の人形師が同居していると言う状況を,読者がスンナリと受け入れていれば問題ないのでしょうが,私の場合はどうもしっくりこないんです。それでも,怜と目吉の設定のみの1作目,ホラーに傾倒し過ぎた3作目に比べると,一番ミステリー色が強く,短編だと言う事もあるのでしょうが,まとまりのある作品だと思います。
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「刑事の墓場」 首藤 瓜於 2006.05.10 (2006.04.15 講談社) |
☆☆☆☆ |
署長の片腕として活躍していたエリート刑事の雨森は,突然の辞令で動坂署に異動になった。この動坂署は,一度も捜査本部が置かれた事が無く,不祥事を起こした者や無能な警官を飼い殺すための「刑事の墓場」と呼ばれていた。半ば不貞腐れて過ごしていた雨森の元に持ち込まれた事件は,痴話喧嘩が原因の些細な傷害事件だった。しかしそれが動坂署はもとより,県警全体を巻き込む大事件に発展していった。 不遇を託つ者たちの逆転のドラマと言うのは,フィクションの世界では良くあります。本当は実力があるのにちょっとした事からエリートコースを外れてしまった者たち。彼らの悔しさや惨めさを共有する事によって,その後の展開が痛快なんですよね。これは大概の読者が,その主人公に自分の一面を投影するからでしょうか。誰だって自分はもっとできるはず,こんな事をしている人間では無いはず,と思っている部分があるんでしょう。それはさておき,この話もそうです。何らかの過去を背負わされて刑事の墓場に送られてきた警察官たち。他の署の者たちに馬鹿にされ虐げられながらも,自分たちの力で事件の解決を目指す話です。でも最初の部分の悔しさ惨めさがちょっと弱い。雨森にしてもその他の人物にしても,ここら辺の書き込みがもう少しあっても良かったのではないでしょうか。また,こんな警察署があるとも思えないし,それをつぶす動きも現実的では無い様に思えてなりません。
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「ゆりかごで眠れ」 垣根 涼介 2006.05.12 (2006.04.10 中央公論社) |
☆☆☆☆ |
日系コロンビア二世で,コロンビアのマフィアのボスに上り詰めたリキ・小林・ガルシア。彼はカーサと言う少女とともに日本を訪れた。目的は日本に於ける麻薬密輸の打合せと,日本の警察に捕らえられている部下パパリトの救出だった。日本の警察を襲い殺人の容疑者を救出する事は困難に思われた。しかしリキは,「約束は必ず守る」と言う事が組織の維持には必要だとの信念から,パパリト奪還に執念を燃やす。 リキとカーサが日本を訪れる場面から始まりますが,両親をゲリラに殺された少年時代,そしてマフィアのボスになっていくまで,そして浮浪児のカーサと知合う場面が,合わせて語られます。ゲリラによる襲撃,マフィア同士の争いの場面何か,映像的でかなり強烈です。そして日本に於けるリキやカーサを取り巻く人達。パパリトの取調べに当たる刑事の武田は薬物中毒,カーサの子守役になる若槻妙子は武田の元恋人で退職警察官,そして飄々とした老人の竹崎。これらの登場人物の個性がとにかく強い。この主人公達の“濃さ”がこの作者の魅力だと思います。そんな彼らによる物語がスピーディに繰り広げられます。同じく南米出身者を主人公にした「ワイルド・ソウル」と比べると,ややストーリーが平板な感じがしてしまいました。
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「町長選挙」 奥田 英朗 2006.05.15 (2006.04.15 文藝春秋社) |
☆☆☆ |
@ 「オーナー」 ... 新聞社の会長で,プロ野球の人気球団オーナーの田辺は,パニック障害に悩まされていた。 精神科医・伊良部シリーズの第3作です。今回の話はかなり実話に近い形で展開します。読売新聞の渡辺氏,ライブドアの堀江氏,女優の黒木瞳さん。そして表題作である「町長選挙」は,かなり昔話題になった鹿児島県の徳之島をモデルにしているのでしょうか。最初の3作は主人公のモデルが容易に想像でき,特に「オーナー」と「アンポンマン」は話自体も実際の出来事をなぞっているだけに,こんな事書いていいのかなと思ってしまいます。その点,最後の「町長選挙」は安心して読めました。伊良部の元を訪れる患者に対するハチャメチャな処置がこのシリーズの面白さなのですが,今回はその点が大人しかったでしょうか。でも患者に対するちょっとした一言が印象的でした。「権力者の人生は終わりが死しかないわけ」。「レーシングカーで公道を走るのは危険だよ」。「一度経験してみると怖くなくなるよ」。「流される,それがいちばん」。
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「うなぎ鬼」 高田 侑 2006.05.16 (2005.06.20 新潮社) |
☆☆☆☆ |
借金で首が回らなくなった倉見勝は,借金の取立てやデリヘルの運転手等をしている怪しげな会社社長の千脇に拾われた。そんな千脇から新たな仕事を依頼された。それは東京近郊の黒牟と言う街にあるうなぎの養殖場へ,コンテナを運ぶ仕事だった。不気味な黒牟のうなぎ養殖場,そしてそこで働く奇妙な男達。自分が運んでいる荷物は何なのか。何らかの犯罪の影を感じながらも,仕事を断る事ができない倉見達だった。 この話,凄く恐いんです。一つは黒牟と言う街の一種異様な雰囲気と,そこで行われているであろうおぞましい出来事。倉見達が運んでいる物は何か,うなぎに食べさせている餌は何か,そして飲み屋で出された肉の正体は。何かこの様な場所があっても不思議じゃないよなあ,と言った恐さがじんわりと襲ってきます。世の中から捨てられてしまった様な街の情景や,そこで働く不思議な人達の描写が上手いです。そしてもう一つの恐さは,ある出来事から始まる,主人公に対する何者かの悪意。前作でありデビュー作の「裂けた瞳」はホラーやらミステリーやらSFやらのてんこ盛りが気になりましたが,本作はシンプルにした効果が抜群です。そして最後の部分の終わり方もいい。
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「深淵のガランス」 北森 鴻 2006.05.17 (2006.03.31 文藝春秋社) |
☆☆☆☆ |
@ 「深淵のガランス」 ... 銀座で花師と絵画修復師を営む佐月恭壱の元に持ち込まれた依頼は,大正時代の洋画家である長谷川宗司の孫娘からのものだった。パリの街並みを描いた風景画の修復だったが,その絵の下に別の絵が隠されている事が判った。 北森さんは幾つかのシリーズ作品を持っており,それぞれの登場人物がクロスオーバーしてくる事が結構あります。本作は新シリーズなのでしょうか,花師であり絵画修復師でもある佐月恭壱が登場します。そして名前こそ明らかにされませんでしたが,明らかに冬孤堂こと宇佐見陶子を思わせる人物も登場します。シリーズ作品の楽しみは判るのですが,冬狐堂や蓮丈那智,そして香菜里屋のマスターと,何となく雰囲気がかぶっている様な気がします。皆が一同に会したらややこしいでしょうね。ちょっと人物が完璧過ぎるのかも知れません。さて花師と言うより絵画の修復師としての活躍が描かれる本作ですが,美術に疎い私にとっては,判らない部分が多いですね。と言うよりも,絵画や壁画の修復何て,一体どうすればいいのか全く判りません。でもそんな事を全く気にしないで読めるのがいいです。
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「0(ゼロ)」 柴田 よしき 2006.05.18 (2001.01.20 祥伝社) |
☆ |
頭部を木端微塵に吹き飛ばされた死体が見つかった。まるで口にダイナマイトをくわえさせて火を点けたら,こんな感じになるんだろうか,と言う者もいた。死体の発見者はヒモ暮らしを続ける山本満留だった。彼は一緒に暮らしている啓子と喧嘩をして,彼女に怪我をさせてしまった。そんな中,同じ様な死体が別の場所でも見つかった。 柴田よしきさんは好きな作家の一人なのですが,どうも私にとって意味不明な作品も書いています。本作はその代表みたいな作品で,一体何が面白いのか全く判りませんでした。どうやら本作の前に関連する作品があるようですが,それを考慮しても同じです。一体この様な事をする存在って何なのかが判らないし,妻が寝たきりになった夫や家出少女等の行動も意味不明。それに出てくる人物は皆薄っぺらな人物ばかりだし。ホラーと言う事になるんでしょうが,恐くもないし,気持ち悪くもないし,カウントダウンに伴う緊迫感も無いし。
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「エンジェル」 石田 衣良 2006.05.19 (1999.11.10 集英社) |
☆☆ |
投資会社オーナーの掛井純一は何者かに殺された。幽霊となって甦った純一は,自分の遺体が埋められる様子を見ていた。しかし彼には殺される2年前からの記憶が欠落していた。自分を殺したのは誰なのか,何故自分は殺されなくてはならなかったのか。幽霊と言う特性を活かして,それを突き止めるべく,以前自分が住んでいた部屋に向かった。 殺されて幽霊となった男が自分を殺した相手や以前の恋人と向き合うと言う事で,有栖川有栖さんの「幽霊刑事」を思い浮かべてしまいます。でもそちらと比べてしまうと,本作は軽過ぎです。これはひとえに幽霊となった主人公の,キャラクターの問題でしょうか。それとも純一と現世の人間とのコミュニケーションがあまりにも軽いせいでしょうか。記憶喪失に掛かった幽霊と言う設定は面白いし,新作映画の製作に絡めたストーリーはいいと思います。それでも純一と彼の父親との関係は不自然だし,恋人役の女優の魅力も伝わってきません。そして最後の場面も取ってつけたようなどんでん返しも後味悪くしている気がします。
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「象と耳鳴り」 恩田 陸 2006.05.22 (1999.11.10 祥伝社) |
☆☆☆ |
@ 「曜変天目の夜」 ... 茶道をしている妻が見たいと言うので見に来た美術館。昔亡くなった友人の事を不意に思い出した。 退職した元判事の関根多佳雄を主人公とする連作短編ですが,多佳雄の息子の春は,「六番目の小夜子」に出てきた人物なんですね。元判事の多佳雄の他,春は検事だし,妹の夏は弁護士で,法律家の一家と言う事になっています。そんな彼らの日常の中の謎解きの話しです。人が死んだり実際の事件に結び付いたり,日常の謎からちょっと逸脱する部分もありますが,法律家一家だからしょうがないか。この様な謎の場合,シロクロをはっきりさせないで,探偵役の推理と言うか推測で終わる事が多いですよね。それでその推測が楽しいかどうかがポイントだと思います。その点,ちょっと推測の部分が複雑すぎて,どうでしょうか。もう少しシンプルに,「おっ,そうきたか。」と思わせてくれる様な感じの方が好きです。
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「池袋ウェストゲートパーク」 石田 衣良 2006.05.24 (1998.09.30 文藝春秋社) |
☆☆☆☆ |
@ 「池袋ウエストゲートパーク」 ... マサ,シュンと池袋西口公園でぶらつくマコトは,ヒカルとリカと言う二人の少女と出会った。 池袋西口公園って,東京芸術劇場すぐそばの小さな公園ですよね。池袋で果物屋をしている両親の元に生まれ,池袋で19歳になったマコト。そんな彼が池袋で活躍する青春小説。私の年代で青春と言うと,野球サッカーラグビーが思い浮かぶのですが,こちらは全く違います。援助交際だったり,ナンパだったり,ギャング団であったり。そう言った現在の風俗を背景に,マコト達の活躍が活き活きと描かれます。テンポもいいし,スピード感があって読み易いですね。そしてマコトを取り巻く人物達も多彩です。だから好きかって言われると,ちょっと躊躇してしまいます。私のイメージしている青春とかけ離れているからでしょうか。まあ彼らが今の若者の代表かと言うと,そうとも思えないし,思いたくも無いのが正直なところでしょう。でも読物としては面白いと思います。シリーズ作品らしいので,続きも読んでみよう。
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「闇椿」 皆川 博子 2006.05.25 (1998.05.20 光文社) |
☆☆☆ |
画廊を経営する村上康雄は,同じビルの喫茶店で働く斎原茜と恋に落ち,結婚する事になった。しかし東京ステーション・ホテルでの結婚式当日,茜はウェディングドレスのまま失踪してしまった。状況から彼女の自発的行為である事は明らかだった。そして茜を捜そうとする康雄だったが,茜の過去を何一つ知らなかった事に気付いた。両親に会いに実家のある山形県を訪れたのだが,そこに住んでいた茜も両親も,康雄の知っている人物ではなかった。 結婚式の直前に新婦が失踪し,実家を訪ねてみたら全くの別人だった。と言う前半の部分は面白い。何やら怪しげな儀式の様子が所々に描かれて,メインのストーリーの謎を深めていく。でも途中から現れた探偵役が雰囲気をぶち壊してます。やたらと軽い人物で,そのオチャラケ方が周りから完全に浮いてしまっている。もっとも新婦に逃げられてしまった康雄の方も,あまり深刻な様子でも無いし,明子の方も訳判らんし。真相の追究が全てなんでしょうが,それにしては最後はバタバタと進み過ぎ。でも椿姉妹って本当にあるんでしょうか。YAHOOで検索してみたけど判りませんでした。
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「服部さんの幸福な日」 伊井 直行 2006.05.27 (2000.01.30 新潮社) |
☆☆ |
出張で乗った飛行機が墜落した。飛行機は海に墜落し,服部さんは海に投げ出された。助かったのは服部さんと,隣に座っていた高木の二人だけだった。海上を彷徨っていた二人は一艘のクルーザーに助け出されたが,何故か目隠しをさせられ両手を縛られた。そして二人は漁船に引き渡され,やっとの事で家に戻る事が出来た。しかしそこから服部さんの身の上に奇妙な出来事が降りかかる。 飛行機が墜落して助かる可能性ってどれだけあるんでしょうか。あの御巣鷹山の事故でさえ520人が亡くなったものの,4人は奇跡的に助かっている。まあ山に落ちるより海に落ちた方が助かる可能性が高い気もします。まあここではそんな真剣な話しではなくて,奇跡的に助かった服部さんが,奇妙な出来事に巻き込まれる話。途中で物語の構図は見えてしまいますが,そこからが進みが遅く,もどかしさを感じてしまいます。また服部さんの方もあまり緊迫感は感じられないし,相手側の人物達にもイライラさせられてしまいました。
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「ぶぶ漬け伝説の謎」 北森 鴻 2006.05.29 (2006.04.25 光文社) |
☆☆☆ |
@ 「狐狸夢」 ... ムンちゃんこと水森からウドンをネタにしたミステリー短編の構想を依頼された新聞記者の折原けい。 「支那そば館の謎」に続く,「裏(マイナー)京都ミステリー」の2作目。嵐山の山奥にある大悲閣千光寺と言うマイナーな寺を舞台に,住職,寺男の有馬次郎,新聞記者の折原けい,ミステリ作家の水森が,様々な謎に挑みます。コミカルに描かれますが,謎解きは結構シリアス。そして前作以上に料理に関する話しが満載なのですが,とにかく美味しそうに思えます。本当に北森さんはこう言った描写が上手いですね。さてタイトルにある「ぶぶ漬け」ですが,お茶漬けの事だそうです。京都の人の家に上がってぶぶ漬けを勧められても,食べちゃだめだそうです。空気を読めない人と見なされるって事なんでしょうか。何か京都って閉鎖的なイメージがあるんですが,さもありなんと言った感じがします。箒を逆さに立て掛けるなんてのもありましたっけ。だけど本当はどうなんでしょうね。そんな事無いとは思うのですが。 |