読書の記録(2002年 3月)

「枝の折れた小さな樹」 鈴木 光司  2002.03.01 (2002.02.15 新潮社)

☆☆☆☆

@ 「目覚めれば目の前は海」 ... 彼女は突然階段から転がり落ちてきた。そして停めておいたバイクにぶつかった。
A 「大山」 ... 山陰本線で長崎に向かう電車の中。別れた妻と出会った駅で,妻そっくりの少女が電車に乗りこんできた。
B 「結婚指輪」 ... 誰が写したのか判らない不思議な写真。妻が幼い子供を連れて海に行った時に撮られた写真だった。
C 「枝の折れた小さな樹」 ... 長男が作ったビデオテープ。そこに写されていたものは,長女の一生の出来事だった。
D 「人生相談」 ... 講演会が終わってのサイン会での事。その客は家族全員の名前を書いて欲しいと頼んできた。
E 「一輪車」 ... 学校へ行かなくなってしまった娘。説得する父親に彼女は,一輪車に乗って見ろと言った。
F 「サイレントリー」 ... 「心に残るワンシーン」と言うタイトルの小論文。1枚のスナップ写真に写った母の姿。

 鈴木さんの書いた作品で,ビデオに関する話らしい,とくれば,どうしたって「リング」を想像してしまうじゃないですか。ですがホラーでもありませんし,全く関係の無い話でした。ここには様々な夫婦,親子,家族が登場します。みんな平凡な生活の中にも,誰にでも起こり得るような出来事が起こります。そんな時に感じる優しさ,切なさ,はかなさ,悲しさが,見事に表現されて行きます。そしてそれは時が経つ事によって,また別の感情を呼び起こします。大学入学祝いの夜に,娘に語り掛ける,赤ワインと亡き妻の思い出。10歳にして病気で亡くなってしまった娘の,もう一つの人生を描き出したビデオテープ。一輪車に乗る事ができなかった,亡くなった父親に対する想い。そして別れた妻が,自分を迎える為に差し向けてくれた娘との出会い。いい話ですよねえ。この「大山」での娘との再開場面なんて,目に浮かぶ様でした。単純な話なんですけど,それだけに迫ってくるものがあります。家族っていいなあ,とあらためて感じさせられます。著者のあとがきによりますと,「執着だらけの世界を,様々な無機物に視点を据えて描いた作品」との事ですが,ここで言う執着とは,生きると言う事なのでしょう。

 

「梟の拳」 香納 諒一  2002.03.04 (1995.10.25 講談社) お勧め

☆☆☆☆☆

 元ボクシング世界チャンピオンの桐山拓郎は,網膜剥離の為に両目の視力を失ってしまった。今は妻で元編集者の和子をマネージャーとして,芸能活動で生活している。そんな中あるテレビ局が毎年行っている,24時間のチャリティー番組に,拓郎は出演する事になった。当日,会場になったホテルで起こった,スポンサーの死をきっかけに,不可思議な事件に巻き込まれて行く拓郎。ボクサー時代に拓郎のマネージャーを努めていた永井康介の不審な言動と,彼の交通事故死。そして何者かによる襲撃と,拓郎を突然襲った八百長疑惑。康介の死の真相を調べる為,拓郎は和子とともに立ち上がった。

 盲目の主人公による冒険小説なのですが,この手の話で重要なのは,主人公の動機ですよね。犯罪捜査のプロでもなく,何らかの権力も知識も無い主人公が,無謀にも悪に立ち向かう強烈な動機。これに納得が出来ないと,物語世界に入って行き辛いんですよね。その点,香納諒一さんは上手いですよ。「幻の女」でも,「炎の影」でも主人公を突き動かす強力な意思が,その後の主人公の突飛な行動にも安心感を与えます。ここでの拓郎の強力なモチベーションは,全盲となった自分と,康介の死です。ボクサー時代,自分の才能と努力のみによって世界チャンピオンにまでなった男は,盲目となって初めて回りの人達の支えを知ります。今や妻の和子がいなくては,外も満足に歩けない自分です。元マネージャーの康介は何事かに巻き込まれながらも,拓郎に助けを求めるでもなく,逆に拓郎を巻き込まない道を選び,その結果死んでしまいます。『身体にハンディがあるってことは、親友がわけもわからず殺されたのに、指をくわえているしかねえってことなのか』。過去の栄光と現在の自分とのギャップを感じつつも,真っ直ぐに生きようとする拓郎。ただこの主人公,ちょっと単純過ぎるところが目に付きます。まあその分,和子や金や留美の存在がいいんですけどね。中々見えてこない事件の真相,妻にも隠していた拓郎の過去,そして,誰が味方か敵か判らない展開によって,最後まで緊張感を持って一気に読めます。

 

「七つの棺」 折原 一  2002.03.05 (1992.11.27 東京創元社)

☆☆

@ 「密室の王者」 ... 町内相撲の優勝者が密室の体育館の中で死んでいた。一緒に居た人達は皆酔いつぶれていた。
A 「ディクスン.カーを読んだ男たち」 ... 資産家の書斎で発見された二人の白骨死体。中から開けられる鍵が残されていた。
B 「やくざな密室」 ... 暴力団同士の抗争。一方がロケット砲を手に入れた事を知って,他方は核シェルターを用意した。
C 「懐かしい密室」 ... 小説家が執筆中の部屋から突然消失。そして2年後,その部屋で首を切られた死体で帰ってきた。
D 「脇本陣殺人事件」 ... 没落した旧家が,昔そこの小作人だった不動産屋に買い取られた。そして旧家の娘と結婚した。
E 「不透明な密室」 ... 汚職によって建設工事を請け負った会社の社長が殺された。人が居たのに目撃者は居なかった。
F 「天外消失事件」 ... アベック.リフトで起こった殺人事件。中からは出られないはずなのに,殺された女性だけだった。

 折原一さんは1988年に「五つの棺」で作家デビューをしたのですが,それに追加,改編をして文庫化されたのが,この作品です。サブタイトルに「密室殺人が多すぎる」とある様に,様々な密室殺人を扱っています。この密室殺人事件に挑むのは,埼玉県の白岡署に勤務する黒星警部。推理小説好きが災いして,幾多の失敗を重ね,左遷させられて田舎の白岡町にやってきたとの事。やたらと白岡は田舎だと述べています。折原さんは久喜市生まれで,白岡育ちなのですが,この事知らないと,気分を害すんじゃないでしょうか,白岡町民。さてこの後に発表される黒星警部シリーズ同様,軽いタッチで描かれていきます。ただこの人の文章って,とてもじゃないけど軽妙とは言えないですよね。ところで密室トリックですが,解説にもある通りなかなか新しいトリックは難しいでしょう。ここでは結果的に密室になってしまった,と言うパターンなのですが,過去の作品で使われたトリックのパロディになっているんですね。どの話もどんでん返しが決まっています。

 

「防風林」 永井 するみ  2002.03.06 (2002.01.16 講談社)

☆☆☆

 勤めていた会社の倒産により,故郷の札幌に帰る事になった芝園周治。子供の学校の関係で妻と娘を東京に残し,先に一人で17年振りの札幌での生活を送り始めた。父は既になく,母も癌であと数ヶ月の命。母の病室を見舞った時,昔隣に住んでいたアオイと再会する。彼女は周治に不思議な思いで話を聞かせた。周治がまだ小学生の頃,帯広から札幌に引っ越してきたすぐ後に,母親の元に一人の男性が頻繁に訪ねてきたと言う。その男性は母にとってどのような関係だったか判らない。しかし死を目前にした母親は,その男性に会いたいのではないかと言う。そんな折,東京で暮らす妻から突然,離婚話が切り出された。

 子供の頃の記憶って,妙に明確に覚えている部分もあれば,全く記憶から抜け落ちてしまっている部分もあります。また何かの折りに,不意に鮮明に思い出したりする事もあります。だけどそう言った記憶って,どこまで正確なんでしょうか。子供の頃にやたらと大きく思えていた物が,大人になってから見ると,「こんなに小さかったっけ」,何て思う事が良くありますよね。結構実際とは食い違っている点が多いんでしょう。さてここでは,死を目前にした母親の過去を調べる息子が出てきます。母の元を訪れたと言う男は一体誰なのか,そして母はその男に会いたがっているんだろうか。人探しの話だと思っていたのですが,周治の子供の頃の記憶が蘇るに連れて,物語は違う方向へと進んで行きます。ウサギを捕まえるために,防風林のそばに掘った落とし穴。風邪をひいて夢うつつの中で見た,防風林に佇む母の姿。冬に北海道へ行った事は無いのですが,雪景色の防風林が目に浮かぶ様です。結末は,ちょっと後味悪いですね。

 

「天使などいない」 永井 するみ  2002.03.08 (2001.04.25 光文社)

☆☆☆☆

@ 「別れてほしい」 ... 別れ話を切り出した友人が,相手の男から殺された。私の結婚話が原因だと言う事は判っていた。
A 「耳たぶ」 ... 会社帰りに事故で死んだ夫。会社で彼にセクハラ疑惑がささやかれていたのを,妻は始めて知った。
B 「十三月」 ... やり手の保険外交員がホテルの一室で殺された。発見者は当日会う約束になっていた,契約相手だった。
C 「レター」 ... レストランで拾った一通の封筒。宛名に書かれていた名前は,かつての恋人の男性のものだった。
D 「銀の墨」 ... 扇子に和歌を書いて欲しいと頼んできた男性が殺された。あの扇子は誰に贈られたものなのだろうか。
E 「マリーゴールド」 ... ふと見掛けたキャリアウーマン風の女性。思わず後をつけてみたら,意外な彼女の姿を見た。
F 「プレゼント」 ... 何かと男性と噂のある後輩のスチュワーデス。ちょっとした悪戯心で,彼女のカードを盗んでしまった。
G 「落花」 ... 画廊で知り合った若い画家。彼女は彼を自分の家に住まわせ,援助をしてあげていたのだが。
H 「振り返りもしない」 ... 出版した写真集が話題になった事をきっかけに,20年前に付き合っていた男性から連絡がきた。

 どの話も女性が主人公です。別に女性に対して天使のイメージを持っている訳ではありませんが,かなり現実的な女性の姿が描かれています。まあこう言うのを現実的と表現してしまうのは,正しいかどうか判りません。女性から見たら全く別の感想になるのかも知れないですね。ちょっと女性を悪く書き過ぎている様な気がします。それでも何となくありがちな話です。「別れてほしい」での独占欲や悪意,「レター」は思いやりなのかおせっかいなのか,「プレゼント」における嫌らしさ,「振り返りもしない」では切なさ,が印象的でした。でも女性を中心に女性の心理を描いた話って,なんで男性の印象がこうも薄いんでしょうか。でも短編の持つ切れ味を感じさせる作品です。

 

「ダイスをころがせ!」 真保 裕一  2002.03.09 (2002.01.20 毎日新聞社)

☆☆☆☆

 商社勤務だった駒井健一郎は,事業失敗の責任を押し付けられた事から,34歳で会社を辞めた。妻と子を実家に帰し,職安通いの毎日だったが,プライドが邪魔をしてなかなか再就職先が決まらない。そんな駒井の前に現れたのは,高校時代の同級生でライバルだった天地達彦だった。勤めていた新聞社を辞めて,故郷の静岡県から衆議院議員選挙に出ると言う。そして失業中の駒井に,選挙活動に協力してくれと言う。

 「♪You got to roll me and call me the tumbling dice」,ローリング.ストーンズですね。さて真保さん期待の新作は,何と選挙の話です。政治や選挙に関しては,ほとんどズブの素人が衆議院選挙に挑みます。真保さんの取材力は有名ですが,ここでもそれは遺憾なく発揮されます。まあ選挙に出る人なんて全国民の1%も居ないでしょうから,どうやれば選挙に出られるのか,どうやって選挙戦を戦うか,何て事はほとんど知られていないと思います。ポスター1枚の値段や,貼るに当たっての決り,選挙カーのリースなどの裏側の情報満載です。大政党に有利な選挙の仕組み,金の掛かり過ぎる選挙などの問題点をはじめ,選挙のイロハを盛り込みながら話は進んで行きます。知名度も地盤も,そして何よりお金が無い。それでも同級生を始め協力者を得て,またインターネット上で選挙費用を公開したりして,選挙の準備をして行きます。でも達彦の祖父にまつわる過去の疑惑,健一郎の家族の問題,大規模開発にまつわる不正追求,一緒に選挙を戦う仲間の友情や裏切り,そしてサキやマキとの恋愛と,ちょっと色々な要素を盛り込み過ぎの感があり,焦点がボケてしまった印象が強いですね。また選挙における主人公はやはり候補者でしょうが,物語の主人公が秘書のせいか,達彦の存在感が薄くなってしまっているのも気になりました。でも高校時代の仲間の雰囲気が伝わってきて,すがすがしいのがいいですね。でもラストは頂けないですねえ。

 

「密室・殺人」 小林 泰三  2002.03.10 (1998.07.30 角川書店)

☆☆

 四里川陣と四ツ谷礼子の二人だけの探偵事務所に,仁科順子と言う中年女性が訪ねてきた。谷丸警部の紹介で,息子の殺人容疑の無罪を証明して欲しいと言う。昨夜,仁科の息子の達彦は,亜細山にある別荘に4人で出掛けていたが,達彦の妻の浬奈が遺体で発見されたらしい。事件を捜査した谷丸警部は,自殺,他殺とも断定できないと言っている。依頼者と顔を合わせない事が信条の四里川に代わって,元婦人警官で25歳の四ツ谷礼子が現場に向かった。

 浬奈は別荘の部屋に一人で入って中から鍵を閉めていた。その部屋から彼女が出ていないはずなのに,彼女は別荘の外で遺体となって発見された。部屋は密室状態だった。密室殺人と言えば,密室の中で殺されるのが普通なのですが,その逆と言うのが面白いですね。タイトルの方もこれを意識して,『密室』と『殺人』の間に『・』が入ったりしています。さて小林泰三さんと言えばホラー作家なのですが,本作はかなり本格的な推理小説となっています。それでもホラー的な味付けが随所にされており,その部分がちょっと邪魔に感じられました。まあそれに関しては最後にその理由が判ります。密室トリックと並んで,この点が大きなウェイトを占めているのですが,ちょっと納得できなかったですね。四里川と礼子を始め,会話の部分がやたらと理屈っぽかったり,嫌な奴ばっかり出てくるしで,ちょっと読むのが辛かったです。密室と殺人のトリックが見事だっただけに,ちょっと残念な気がしました。

 

「幻の祭典」 逢坂 剛  2002.03.11 (1993.05.25 新潮社) お勧め

☆☆☆☆☆

 1936年,ベルリン.オリンピックをナチスのプロパガンダ大会だと非難して,スペインのバルセロナでは人民オリンピック大会が計画されていた。馬術競技の関係者としてベルリンを訪れていた立花兵輔は,突如ベルリンを脱出してバルセロナへ向う。そして半世紀後の1991年,バルセロナでギターの勉強をする森村奈都子の元に,日本から1本の電話が掛かってきた。彼女がかつて在籍していたアデックスと言う広告会社からのものだった。来年開かれるバルセロナ.オリンピックを前に,50年以上前に計画され,スペイン内戦の勃発によって中止された,もう一つのオリンピック大会のドキュメンタリー製作に係わる依頼だった。

 1992年にバルセロナで行われた第25回オリンピック大会は,200メートル女子平泳ぎで岩崎恭子選手が金メダルを獲得した事が思い出されます。でもこのオリンピックで一番印象に残っているのは,開会式における聖火点灯ではないでしょうか。まさか火矢で点火するとは思いませんでした。さてこれより50年以上前に,このバルセロナでもう一つのオリンピックが計画されていた事は全く知りませんでした。物語はこの二つの時代を行き来しながら進みます。バルセロナに着いたものの,大会は中止となりスペイン内戦に巻き込まれて行く立花。日本からやってきた重堂や久留主らとともに,人民オリンピックを調べる奈都子。そして奈都子の知り合いで,新聞記者のマルセ,彼女の母親のアリーザ,そして彼女らに近づいてきたジュアン等の人物が,物語に深みを与えて行きます。現代における話が中心になっているのですが,オリンピックに反対するグループの襲撃,他の広告会社からの牽制,また息子を殺されたジプシーの復讐などが緊迫感を盛り上げます。そして過去と現代,そして日本とスペインにおける血の関係がチラホラ見えてきます。「燃える地の果てに」が思い出されますが,この手の話は逢坂さんの独壇場と言った感じですね。面白いです。現在のスペインにおいても,民族の対立や,過去の内戦の影響って,結構強いんでしょうか。サッカー何か見ている限りでは,あまり感じられません。それにしてもFCバルセロナの調子がイマイチですね。フィーゴの抜けた穴が大きいんでしょうか。頑張れ,クライファート。

 

「ペトロバクテリアを追え!」 高嶋 哲夫  2002.03.12 (2001.04.19 宝島社)

☆☆☆☆

 湾岸戦争の最中,中近東の洞窟で土壌を採取した日本人科学者。林野微生物研究所の山之内明は,この土壌を元に画期的なバクテリアの培養に成功した。それは炭素化合物を石油に変えてしまうバクテリアで,ペトロバグと命名された。この発見は世界経済の根底を覆してしまうもので,日本でも石油輸出国になる可能性を秘めている。何とかペトロバグを手に入れようとするアメリカのオイルメジャー。そしてこのバクテリアを消し去ろうとする中東産油国。しかしこのバクテリアには致命的な欠陥があった。

 科学の発展の恩恵を受ける度合いは,今後も高まりこそすれ下がる事はないでしょう。しかしその反面で,様々な弊害も生じています。地球温暖化,オゾンホールの破壊,様々な汚染,挙げて行ったらきりが無いでしょう。それでも科学は,さらなる人類の飛躍を実現しようとします。ここに出てくる二人の科学者は,それぞれ負い目を持って研究生活を続けています。戦争中731部隊に居た経験のある林野史郎,そして事故により3名の生徒を死なせてしまった山之内明。この様な話の場合,やたらとバイオテクノロジーに傾きがちになったり,科学者の私利私欲が前面に出過ぎたりします。でも科学の発展と人間の幸福を,合わせて考える主人公達がいいですね。でも最大の見せ場であるべき,各国際機関による攻防シーンはどうでしょうか。OPECやメジャーが送り込んで来た殺し屋達が,あまりにもお粗末でオマヌですよね。これは「ミッドナイト.イーグル」でも少々感じましたが,こちらは厳冬の北アルプス山中における,衝撃的かつ感動的なラストが,全てを帳消しにしていました。それに較べると,この結末はちょっと物足りない気がしました。

 

「クリスマスの4人」 井上 夢人  2002.03.13 (2001.12.20 光文社)

☆☆☆

 ビートルズの解散が決定的になった1970年のクリスマスの夜。久須田潤次,番場百合子,橋爪絹江,塚本譲の二十歳の4人は,深夜のドライブを楽しんでいた。突然の交通事故は,免許を持っていない百合子が,車の運転をしたがった事から起こった。男の死体を呆然と見つめる4人の若者。警察に届けるか,それともこのまま逃げるか。彼ら4人は男をトランクに詰め,秩父山中に裸にして捨てた。男が持っていた2百万円は4人で分け,衣類は燃やして捨てた。そして10年後のクリスマスの夜,再会を果たした4人のもとに,突然現れた死んだはずの,あの時の男。

 私は中学生でしたが,1970年と言うのは色々とあった年ですね。アポロ11号の月面着陸,三島由紀夫の割腹自殺。ビートルズの解散もそうですが,ジミ.ヘンドリクスもジャニス.ジョプリンも,この年に亡くなりました。ウッドストックが開かれたのは,この1年前なんですね。さて「オルファクトグラム」以降久し振りの新作は,この1970年に二十歳を向えた男女4人の不思議な物語です。1970年に起こした轢き逃げ事件,そして1980年,1990年,2000年の4人が描かれて行きます。井上夢人さんの作品は,ミステリー,SF,ホラーと言ったジャンルの境界線を綱渡りする様な作品が多いんですけれど,ここでは犯罪を犯してしまった4人の心理が中心に進みます。最初に出てくる事故の場面から,あたかも自分が人を轢いてしまったかの様な気にさせられて,思わず引き込まれてしまいます。実際,轢き逃げをして逃げている犯人の心理って,怖いでしょうね。そして10年後に現れた,あの時の男。そして次の10年後では新たな事件。さて50歳になった彼らが知る結末は...。各年代の話を4人それぞれの視点で描いているのがいいですね。

 

「奥羽路 7冠王の殺人」 本岡 類  2002.03.14 (1997.04.30 祥伝社)

☆☆

 山形県天童市から程近い,月野温泉の観月荘で行われた将棋の覇王戦。この一局を桐島高晴名人が制し,七冠王が誕生した。その夜,祝賀会が行われた旅館の庭で,一人の男が死体で見つかった。発見したのは水無瀬5段と師匠の流9段。殺されていたのは名取と言う元将棋関係のライターだった。東京に戻った水無瀬は,将棋会館で広報担当の国松8段から呼び出しを受ける。7冠王誕生に沸く中,同じ場所で起こった殺人事件は,将棋界のイメージダウンにつながる恐れがあるので,事件の真相を探って欲しいと言う。

 やっとシリーズ1作目を読み終えました。将棋の事は詳しくないのですが,将棋の7冠と言うのは,名人,竜王,棋聖,王位,王座,棋王,王将だそうです。ボクシング何かでもWBAとかWBCとかあって,一体誰が一番強いんだ,と疑問に思ってしまうのですが,いろんなタイトルがあるんですね。スポンサーやら何やらの関係なんでしょうが,勝負事はシンプルな方がいいですね。さて7冠王誕生の夜に起こった殺人事件,その疑いが何と7冠王の桐島名人に向けられる。殺された男の部屋に残された謎の言葉,「頭の無い獅子,巨人の口」。そして続いて起こった2件目の殺人事件。探偵役の水無瀬5段はちょっと頼りないのですが,そこはプロの棋士,冷静さと頭のキレが垣間見えます。でも事件自体は単純ですよね。私は推理しながら読む方ではないのですが,私でさえ犯人とその動機が途中で見えてしまいました。それにしてもシリーズ物って,登場人物の変化がもう一つの見所だと思うのですが,ずっと5段のままだし,女流棋士との仲も全然進展していないんですね。

 

「妖櫻忌」 篠田 節子  2002.03.15 (2001.11.30 角川書店)

☆☆

 古典を題材にした作品で知られる,高名な女流作家の大原鳳月が亡くなった。アテナ書房で彼女を担当していた堀口は,連載作品の最終稿を貰えた事に安堵していた。そんな時,大原の元で長年秘書を勤めていた若桑律子が堀口を訪ねてきた。自分が書いたと言う原稿の持ち込みで,内容は大原の一代記だった。そしてこの原稿にまつわるいくつかの謎。これは大原が書いたものではないのか,今まで大原の作品とされていたものは,実は若桑が書いたものではなかったのか。

 これってホラーだったんですね。読み始めは原稿を巡る謎が広がってきて,グッと作品に引き込まれたのですが,何か途中からはぐらかされた気がしてきました。大体ホラー作品としたら,怖くも無いし,気持ち悪くもないし,結末も平凡だし...。篠田さんて結構ホラー作品書いてますけど,「神鳥 イビス」何かと較べると,ちょっとどうでしょうか。まあその分,大原と律子の際立った対比と,堀口を始めとする出版界の嫌らしさの方が,読んでいて面白かったですけどね。あと妙に納得してしまったのですが,モーツァルトのレクイエムって,私も主に前半の方しか聴かないです。

 

「天切り松 闇語り 第3巻」 浅田 次郎  2002.03.18 (2002.02.28 集英社)

☆☆

@ 「初湯千両」 ... 寅弥兄いと出掛けた銭湯で出会った,泥だらけの少年。彼の父親はシベリアで戦死したと言う。
A 「共犯者」 ... 電車の中で知り合った美女は,皇族の一員だった。東京駅で迎えの者が来ていなかったので送って行った。
B 「宵待草」 ... 竹久夢二の絵葉書を買いに行ったおこん。そこでなんと竹久夢二本人からモデルを頼まれてしまった。
C 「大楠公の太刀」 ... 幼馴染の見舞いに行った栄治。彼女の為に大楠公の刀である小龍影光を手に入れる事に。 
D 「道化の恋文」 ... 康太郎の知り合いの仁太の父親はサーカスの道化。ある日仁太は一人の少女から手紙を貰った。
E 「銀治蔭盃」 ... 網走刑務所を出てきた山源から知らされた仕立屋銀次の様子。4日かけて網走まで面会に向った。

 闇語り,それは向こう六尺にしかけっして聞こえぬ,夜盗の声音。70年前,松が泥棒の修行をする,目細の安吉一家の活躍を,松が独特の口調で語りかけます。押し込み強盗の説教寅,黄不動の栄治,百面相の常次郎,紅一点のおこん姐御,常連さんの登場です。松本人も稀代の盗人なのですが,自分の活躍ではなく,子供の松の目から見た,盗人達の姿です。みんなかっこいい,と言うか粋ですよね。でも前の2作に較べて,闇語り自体の雰囲気が薄れている様な気がしたのですが,その分最後の「銀治蔭盃」で闇語りの真髄が披露されます。話自体は70年前の事なのですが,ボランティア,セクハラなどの現代の話題を持ち込んで,ちょっと説教臭さが強くなっているのが気になります。また康太郎くんが出てくる話も,ちょっと感動薄かったですね。前2作が良かっただけに,ちょっと残念です。

 

「神のふたつの貌」 貫井 徳郎  2002.03.19 (2001.09.25 文藝春秋社)

☆☆

 教会の牧師の息子として生まれた早乙女輝(ひかる)は,寡黙な父親を尊敬していた。しかし母は夫が牧師である事に不満を抱いているのが,子供心にも判っていた。そんな父と母の気まずい関係を決定的にしたのは,ヤクザに追われて教会に逃げ込んできた,朝倉暁生と言う男の存在だった。町中で囁かれる母と暁生の不倫の噂,そんな中二人は交通事故で亡くなってしまう。子供の頃から肉体的な痛みを感じられないと言う奇病を持った輝は,母の死に対しても精神的な痛みを感じられない事に気付く。そして輝は,キリスト教における神の存在を考えはじめる。

 全能者,絶対者,超越者と言う3部構成で,それぞれに小学生時代,大学時代,そして3代目の牧師になった早乙女輝が描かれて行きます。「アレッ,これってミステリーじゃないのかな」と思ったのですが,しっかりとミステリーしてます。早乙女の周りで起こるいくつかの事件。母の事故死,久永の転落死,アルバイト先のコンビニでの事件,恋人との別れ,そして妻の死。でもそれらの事件よりも,神に対する思いが前面に綴られて行きます。牧師の息子と言う,他の友人とは違う育った環境と,痛みを感じる事ができない自分。神は何故人を苦しめるのだろうか,生まれる前からの神との契約なのか,自分に福音は届かないのだろうか。あまり宗教には興味が無いのですが,ここ等辺は作者のうまさでスンナリ読めます。だけど逆にミステリーとしての仕掛けの部分がちょっと弱くなってるのと,最後の展開が急過ぎる感じが残ってしまいました。子供の目から見た父と母,そして自分が父になってから見た息子。こう言った家族の描き方はさすがです。

 

「階上の闇」 結城 五郎  2002.03.21 (2002.03.08 角川春樹事務所) お勧め

☆☆☆☆☆

 T大学医学部第二内科に勤務する赤松正樹は,佐々教授から新しい研究を指示された。それはR製薬が開発した,コレステロール降下剤Jに関するものだった。教授からはマウスによる動物実験だけではなく,人間を使った実験の必要性も暗に仄めかされた。正樹はアルバイトで勤務している槙病院の患者,羽生龍一を実験の対象に選んだ。何とかして佐々教授からの信頼を,正樹は勝ち取らなくてはならない。T大学の教授になる事が,正樹にとって子供の頃からの夢だったからだ。

 あまり関係無いのかも知れませんが,TだとかRだとかJとかで,固有名詞を表すのは嫌いです。何かスンナリ読めない気がしてしまいます。それはいいとして,大学教授になると言う夢の為には,教授の言いなりに人体実験をも厭わない男,と言うと凄く嫌な人間に見えちゃいます。でもここではその夢を持つに至った過程が詳しく述べられていきます。暴走族に殺された父親,貧乏な生活,そして同級生であり大学教授を父に持つ山脇真彦との関係。ですから読んでいてジレンマを感じさせられます。うまくいって欲しい反面,そうなるはずの無い展開。さてメインとなる謎は,欲望や嫉妬の渦巻く教授戦の最中,怪文書を送ってきたのは誰なのか。疑心暗鬼に陥っていく正樹には少々イライラさせられます。真相に関してはちょっと強引な感じがしないでもありません。でもラストがいいですよね。夢を追いかけると言うよりも,夢に取りつかれてしまった男が,その夢から解放されるわけです。もう少しこの部分を厚く書いて貰いたかった気がしました。ちなみに志織の故郷である静岡県の千頭には,山登りで行った事があります。吊り橋は結構怖いですけれど,紅葉の綺麗ないいところです。

 

「絶対零度」 本岡 類  2002.03.25 (2002.02.20 講談社)

☆☆☆

 立花総合法律事務所に勤務する弁護士の山岡秀介は,ある殺人事件の弁護を依頼された。20歳の大学生が起こした事件で,同じアパートに住む男を刺し殺したものだった。被告の津村貴之は,覚醒剤の幻覚による妄想から,男を殺してしまったと言っている。面会に訪れた山岡は,津村から不思議な話を聞かされた。覚醒剤の売人に「おやじ殺しゲーム」と言うものをさせられ,その時の感覚が事件を引き起こしたと言うのだ。警察はこれを単なる妄想と片付けていたが,山岡はこの証言に興味を引かれた。

 PTSD(ポスト.トラウマティック.ストレス.ディスオーダー:心的外傷後ストレス)の話って,最近良く聞きますし,小説の中に登場する事も多いですね。幼児虐待など,考えられない様な事件が報道される中,事件の被害に遭われた方は,その後も苦しみから解放されない部分があるんでしょう。ここでは,覚醒剤とゲームを利用して,人間を殺人者に変えてしまう話です。主人公の山岡は,イジメによる息子の自殺事件から立ち直れないままに,後輩の法律事務所の手伝いをしています。夕方の月みたいに存在感が無い,と陰口を叩かれていたりもしています。そんな彼が覚醒剤の幻覚からの殺人と思われる事件に,のめり込んでいきます。ここらへんの動機が弱い気がしてしまいました。息子が麻薬中毒者に殺されたとかだったら判り易いと思います。でも子供を救ってあげる事が出来なかったと言う負い目からの,再生の物語でもありません。山岡と千鶴による調査も一本調子で緊迫感に欠け気味だし,最後の展開も唐突な感じがしてしまいました。

 

「逆転検屍」 川田 弥一郎  2002.03.26 (1995.08.31 徳間書店)

☆☆

 大学病院に勤務する女医の椎葉悠海子は,上司から頼まれた病院での当直の夜に,死体の検屍を頼まれた。近くの公園で血を吐いて亡くなった男の遺体だと言う。どう見ても胃潰瘍か何かによる病死と思われた。翌日行われた解剖の結果でも,やはり病死に間違い無いとの事だったが,悠海子は検屍の際に持ち帰った便の中に,不思議な物を発見する。それは死体の処理に使用される綿だった。その男は公園で亡くなったのではなく,病院等で亡くなった後,公園に棄てられたのではないかとの疑惑が沸き起こった。

 川田さんは検屍を題材にした作品を何作か書いておりますが,それは江戸時代や中国の宋の時代と言った昔の話ばかりです。最先端の医療知識を駆使できるはずも無い時代の検屍を,見事に描いた作品で私は好きです。今回は現代における話なので,どう言う展開になるのか興味深かったのですが,結構意表を突いています。検屍がテーマだと,物言わない遺体からいかにして殺人者の意図を見破るか,と言うところが見せ所だと思います。しかしここでは殺された訳ではない,病死の遺体が登場します。その裏にどんな犯罪が隠されているのか,と言った推理が中心となって行きます。DNA鑑定で判らない事を,昔に書かれた古い日記から判明させたりして,あくまでも最新技術を廃しているのがいいですね。でも悠海子の弟で推理小説家を目指す充年を始めとする,登場人物の軽さが頂けないですね。

 

「無防備都市 禿鷹の夜U」 逢坂 剛  2002.03.27 (2002.01.15 文藝春秋社)

☆☆

 渋谷で小さなバーを経営する桑原世津子の元に,その夜やってきた男は,新興暴力団マスダの宇和島だった。マスダは,以前からこの地域を取り仕切っていた渋六興行に代わって,最近勢力を伸ばしている組織で,宇和島は渋六興行からマスダに寝返った男だった。マスダの傘下に入る事を強要して嫌がらせをする宇和島。そこに現れたのは,神宮警察署生活安全特捜班の禿富鷹秋(トクトミ.タカアキ)警部補だった。

 一昨年に発表された「禿鷹の夜」の第二弾。暴力団組織と関係を持ち,その為対立する組織から狙われる刑事,禿富鷹秋(通称ハゲタカ)の物語の続編です。この主人公はとにかくハチャメチャです。警察と言う組織にあって,まるっきりの一匹狼であり,その行動はまともな警察官とは思えません。型破りな主人公は時として,悪を憎み弱きを助ける正義のヒーローとして描かれる事が多いと思いますが,そんなんではありません。逢坂さんの作品には,同じ生活安全課の刑事を描いたコミカルな作品もありますが,それとも全く違います。ストーリーは禿富を中心に,対立する暴力団同士,また禿富を追い落とそうとする警察内部の動きが,ずっと続きます。謎があるわけでもありませんし,緊迫した場面が目立つ程あるわけでもなく,やや平板な感じがします。何と言っても主人公のキャラクターと,その行動が全てなんでしょう。しかしこの主人公に感情移入する事は不可能です。とにかく何を考えているのかが全く判らないんですもん。三人称多視点にて描かれていますが,主人公の内面描写を一切排しています。作者が何故意識的にこの様な描き方をしたのか判らないので,ちょっとついて行けない感じでした。

 

「レイクサイド」 東野 圭吾  2002.03.27 (2002.03.25 実業之日本社)

☆☆☆☆

 姫神湖の別荘地に集まったのは,並木,藤間,坂崎,関谷の4家族と,塾講師の津久見。ここで中学受験を控えた子供向けの勉強合宿が開かれる。日頃こう言った場に出た事の無い並木俊介は,今回初めて参加した。最初の日,並木の部下で愛人の高階英里子が別荘を突然訪ねてくる。そして並木の外出中に,並木の妻である美菜子が英里子を殺してしまう。警察に連絡しようとした俊介を押し止めたのは,藤間達だった。事件が表ざたになれば,子供達の受験に悪影響が出る。ここは皆で協力して事件をもみ消してしまおうと言う提案だった。

 妻が夫の愛人を殺した,と言うのは有りがちな話ですが,ここではシチュエーションが面白いですね。子供を交えた4家族での合宿中の別荘地,何故か死体遺棄に協力的な他の家族。違和感を感じつつも,俊介は英里子の遺体を湖に沈めます。最初の方で,俊介が英里子に今回の合宿のメンバーについての調査の依頼をしていた事が仄めかされます。そんな中で起こった英里子の死ですから,妻をはじめ俊介以外の人達には何らかの秘密があるんでしょうか。無くなった片方の靴,別荘に停められた車の向き,片付けられていたボート。いくつもの謎が俊介の疑問を深めて行きます。そして妻に対する浮気の疑惑,英里子が残した写真,そして参加している人達の微妙な関係。最後に明かされる真相は,全く思いもよりませんでした。登場人物の設定,犯行の動機,様々な伏線,どれを取っても見事ですね。

 

「ショカツ」 佐竹 一彦  2002.03.29 (2000.04.10 角川書店)

☆☆☆

 あの頃刑事を目指していた僕は,警視庁城西署で見習いとして研修を受けていた。僕を担当してくれたベテランの刑事は赤松主任と言って,盗犯を担当している刑事だった。ある日赤松主任と一緒に質屋を回っていた時,無線で事件の知らせを受けた。少女が何者かにボウガンで頭を撃たれたと言う。幸いな事に命は助かったが,犯人の行方が全くつかめない。目撃情報の聞き込みや,犯罪歴のある者の捜査に明け暮れる毎日だった。

 佐竹一彦さんは元警視庁の警部補でした。ですから当然警察内部の事には詳しく,こう言った地味な刑事の話だと凄く説得力あります。もし何らかの犯罪を犯そうと思っているのなら,佐竹さんの作品は読んでおいた方がいいみたいですね(私は予定無いですが)。捜査の方針が決められ,各自の分担が割り振られ,皆が持ち寄った情報を報告し合い,様々な検討が加えられていきます。そして再度起こった類似の事件により,本庁の刑事が乗り込んできます。本庁の刑事は緊急手術が専門の救急救命センターの外科医の様な存在に対して,所轄の刑事はいわば町医者の様なもの,と言う話がでてきます。両者の関係が良く判ります。「太陽にほえろ」などの,ドラマに出てくる様な刑事などではありません。日々の地道な捜査を繰り返す毎日です。聞き込み相手に苦労させられたり,うるさい警察OBの相手をしたりします。ですから最後の展開がちょっと派手になってしまったのが,ちょっと不満です。あくまでも地味に解決して欲しかったと思いました。